XVIII
わたしはあなたと伴にいる。
あなたはその意味をきっと考えているのだろう。だが、わたしは考えない。それはわたしの役割ではない。あなたが私のことをどう思っているのか知らないし、興味もない。きっとあなたにはわたしについての記憶があるのだろう。わたしたちの関係は、あなたの記憶の中にある。わたしは、あなたのことを知らない。わたしのことさえ知らない。
なにをぶつぶつ言ってるの?
なんでもないよ。ひとりごと。
どうせわたしの言葉などたいして意味がない。もしも彼女に聞こえたところで、その耳に届く頃にはわたしの知らない別の言葉になっている。
あなたはわたしの隣にぴったり座り、無邪気にからだをすり寄せる。
わたしは彼女の体温を感じながら、あたりを見回す。公園とか、学校の中庭とか、そんな雰囲気の場所だけれど、人の気配を感じない。向こうの方でおしゃべりする声や遠くの街のざわめきが小さな音で聞こえるけれど、わたしたちは取り残されたようにぽつりとしている。たったひとつしかないベンチで寄り添っている。大人でもなく子供でもないわたしたちは、姉妹のように、双子のようにからだを寄せ合ってる。
わたしの肩に頭を預けるあなたの手を握る。頬を撫で、長い髪に指を絡ませる。
白い雲を通した鈍い光。
凪いだようにひっそりとする梢。
あなたはわたしにプラトニックな恋愛感情をもっているみたいだ。わたしはあなたの疑似的な恋人だ。わたしはその気持ちに応えているのだろう。期待通りに振舞っているのだつう。あなたがしてほしい、と思うことをしているのだろう。だから、ぼつりぼつりと語り始める。
昔ね、わたしたちみたいな女の子がいたんだって。
うん。
とっても仲良しで、いつも一緒で、お互いのことを想っていて。
うん。
一緒に歌を歌ったり、原っぱで追いかけっこしたり、お互いの髪を梳かし合ったり。
うん。
これはきっとわたしたちのお話だ。わたしはその結末を知っている。あなたも当然知っている。バッドエンドではなくてもハッピーエンドではない。少し悲しくて、少し寂しくて、でも、ずいぶん前からそうなることを予期していた、軽いアンハッピーエンド。
わたしは物語りながら消えてゆく。別れるわけでもない。会えなくなるわけでもない。ただ、消えてゆく。それはきっとお互い様なのだ……そう、でしょ。
うん。
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