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私を着る

REFLECTION(第3話)

加藤那奈

制服を着る/私を着る
制服を脱ぐ/私を脱ぐ
誰かが誰かに恋をしている。
(2025年)

タグ: #ファンタジー #散文 #純文学

小説

20,382文字

V

 

大切なことは細部に拘ること。

僅かな丈の長さの違い。

ほんの少しだけ緩めたネクタイやリボン。

こっそり縫い付けるレースやフリル。

あからさまでは品がない。気づかれなければ意味がない。一瞥しただけではわからないけど、何か違うなって思わせる匙加減が難しい。

でも、わかる人だけがわかればいい、っていうのも本当のところ。コーヒーだって紅茶だって、豆や葉っぱが違ってもわからない人がいるでしょ。それと同じ。そういった人たちには十把一絡げの誰かでかまわない。私も、そんな人になんて興味ないし。

みんなに紛れ込むことだってけっこう大事なことなんだ。目立たず、埋もれず。私なんて、見た目も性格も成績もほどほどだから楽ちんと言えば楽ちん。ときどき目を見張るような美少女がいるでしょ。学校にも学年にひとり、ふたりいるかいないか? お休みの日にハラジュクとか歩いてたら怪しいスカウトに声かけられそうな子。ああいう子は何だかたいへんだなって思うんだ。見た目だけで目立っちゃうから。だから、あえて垢抜けない格好するなんていう子がいるって話も聞いたことがある。それって、ちょっと嫌みだけど。でもね、そういう子って、どんな格好していても目立っちゃうんだよね。誤魔化しようがないんだよね。むしろダサいみなりしてる方がギャップに萌えたり、ね。そんな子がグループにいたら、他の面子が霞んじゃうじゃない。美少女とその取り巻き、だよね。

容姿ばっかりじゃないけど、ひとりが目立ち過ぎるのはあまり好ましいことじゃないかな。私たちはね、ほどほど一緒で、ほどほどばらばらなのがいいんだよ。制服を着ている間は、制服の恩恵にあずからないと、ね。

クラスでね、グループができるでしょ。私自身は、連むの好きじゃないから、そういうのとは少し距離をおいていて、ボッチになるならそれでもいいかな、なんて思ってたら、一匹狼的なポジションが認知されちゃったみたい。みんなとつかず離れず? そんな他人事的な目でいろんなグループ見るでしょ。見てるとね、どのグループも構成みたいなのが似ててね、思ったんだ。仲間の役割なんてまあまあテンプレなんだなって。

賑やかな子、仕切りたがる子、適度に空気が読めない子。適度にばらばらだから仲良くしていられるんじゃないかな。あんまり同じような子ばっかりだときっとつまらない。いわゆるキャラかぶりだよね。かぶってるのが2人くらいならちょっと面白いんだけど、3人4人かぶってる集団は気持ち悪い。価値観が一方向に偏りすぎてて、その中で個性を張り合おうなんてするから、間違った方向で盛り上がっちゃって。本人達がそれでいいならいいんだけど、そういうのは凄く薄っぺらで上っ面な感じに見える。

ああ、でもそうか……薄っぺらで上っ面なのは、みんな同じなのかな。

でもね、気になるんだ。ちょっとした袖の長さの違いとか、スカートの丈とか。

© 2025 加藤那奈 ( 2025年1月27日公開

作品集『REFLECTION』第3話 (全6話)

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