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デートしよう。
お昼休み、いつものように私の席にやってきたケイが、挨拶もなしに言う。
今度の連休、デートしよう。ついでに私んちでお泊り会しよう。
私がきょとんとしていると、ケイが首をかしげる――OK?
どうして?
ルゥのことが好きだから。ちなみに、うちの両親、留守だから。ふたりきり、だよ。
下心にまみれた男子のような台詞だ――大丈夫、何にもしないからさぁ。
私は黙ってケイの目を閉じる。
沈黙は肯定と見做すがよいか?
何が目的?
決まってるじゃない。ルゥのカラダ・・?
じゃあ、ここで私が承諾したら……そうだね、合意ってことかな。
本気なのか巫山戯てるのかわからない顔で笑う。
カラダ云々はさておいてさ、もうちょいルゥとお近づきになれたらな、なんて、ね。夕べ思いついたんだけど。ああ、だいたい言いたいこと、わかるよ……おいおい、私らそんなに親しかったっけ? これまでだって、9割くらいはあんたが一方的に話しかけてるだけじゃない。学校帰りの道草に付き合うことはたまにあるけど、せいぜいそんなもんでしょ。お休みの日に会ったことすら、1年あまりの間にたった1回だっけ? あんた私じゃなくても、いっぱい遊び友達いるんだから、わざわざ私を誘う理由がわからないわ……って、こんな感じ? あたらずとも遠からず、かな?
見透かされているようで、ちょっと不愉快だった。
いいから、付き合ってよ。どうせ予定なんて無いんでしょ。私がルゥをこんなふうに誘うことなんてこれが最初で最後かもしれないわよ。ああ、別に私が居なくなっちゃうとかそういうことじゃなくってね、お互いいつもと違う姿を見て幻滅するかもしれないじゃない。私がルゥを嫌うことはほとんどないと思うけど、ルゥが私を大っ嫌いになることは、ひとつの可能性として覚悟はしてるよ。あんたの顔なんか二度と見たくないってさ。もちろん、その逆も大いに期待してるんだけど。
ホントに何する気?
まあ、成り行きで。おおざっぱなプランとしては、1日目のデートは私がエスコートして、夜は私の部屋でね。2日目はルゥの行きたいところへ行く、って感じでどう?
OKしたつもりは無いのだけれど、すっかりそういうことになっていた。
ケイはどうして私にこんなにかまうんだろう。ルゥが好きだから……何度も聞かされてるけど、私のどこが好きなんだろう。私が一番私に興味が無いのに。だから、ケイの瞳に映る私を見てみたいと思った。
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