現在、日本の司法では二人以上殺害しないと死刑にはならないらしい。しかし、先日安倍元首相を暗殺(私は暗殺以外の言葉を思い付かないがメディアはこの言葉を使いたがらない)した山上容疑者には検察が死刑を求刑するようだ。殺された人物が公人なのか私人なのかといった問題ではない。旧統一教会への私怨から暗殺したとなれば政治犯として立件することは出来ないから、改造銃を複数作成していたことやその他細かな犯罪を積み重ね死刑に持っていく算段らしい。
今回の課題図書『楽園とは探偵の不在なり』では二人以上殺したら降臨した天使によって地獄に落とされる。それに加え、地獄に落とす役目の天使の好物が砂糖であったり、『フェンネル』という爆発物を扱う武器商人実業家の存在といった突拍子もない設定も受け入れた上で、作中で語られている事柄だけで理論的に解決していこうと思う。
作中に本格ミステリの大家エラリィ・クイーンやヴァン・ダインの名前が出て来る。作者はその名前を出すことで読者にフェアに推理することを望んでいると考えた。よって倉早の言った「ヴァン・ダインの二十則」に従い以下使用人は犯人から外す。
・倉早千寿紗
・大槻徹
・小間井稔
また、「ヴァン・ダインの二十則」は叙述トリックの類も否定している。よって三人称単一視点の探偵役を犯人から除外する。すると犯人と足りえる人物は以下に限定される。
・常木王凱
・政崎來久
・天澤斉
・報島司
・争場雪杉
・宇和島彼方
・伏見弐子
この中で第五章までに明らかに死亡している人物は以下だ。
・常木王凱
・政崎來久
・天澤斉
・争場雪杉
既に死亡している人物を覗けば犯人は三名に絞られるが、「ヴァン・ダインの二十則」では物語前半にいなくなったまたは影が薄かった人物がひょっこり現れて犯人となってはならないといった規則も存在する。よって行方不明の報島司を除くと犯人は以下二人に絞られる。
・宇和島彼方
・伏見弐子
この中で武器商人同盟に参加していた人物はいない。しかし、常木王凱の主治医を務める中で宇和島が同盟の内紛を知っていたであろうことは想像に難しくない。医療行為の名のもとに天使を騙し、殺人を犯した可能性は否定できない。残念ながら宇和島が最初に誰を殺したかまでは特定できなかったが、メンバーの内紛で次々と死んでいく中で宇和島は天澤を殺した。井戸の下で死んだ天澤は作中再三言及されているように「天使は砂糖に目がない」という特性を利用したトリックを使って殺したのであろう。井戸の中、もしくは天澤自身に角砂糖のようなものを仕込み、天使が天澤を井戸に落とすようにしこんだ。そう考えれば二度目の殺人のあとも地獄に引きずり込まれなったのも理解できる。
伏見弐子についてはどうだろうか。「ノックスの十戒」ならまだしも「ヴァン・ダインの二十則」では偶然が重なり犯人となるシチュエーションを否定している。私もそれに従う。
よって、この事件は同盟関係の内紛による連続殺人事件であり、それを計画し実行したのは宇和島彼方である。
以上。
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