1月。
あたしは店を飛んだ。
週イチで指名してくれてた太い客が有名なグループのヘルスの店長だったの。
「今よりももっと稼がせてあげる」
引き抜きは業界ではタブーだったけれど、その言葉に気持ちがグラグラと揺れて、あたしはヘルス嬢になった。
OLの衣装を着て痴女役を演じ、社長と称された客をひたすら責めるスタイルの店。
薄暗い照明のプレイルームには革のチェアとテーブル、真っ赤なベッドが置いてある。
キャストが準備をしている間に、客は病院の問診票みたいにそれぞれ言われたい言葉や性感帯を書いてスタッフに渡す。
そしてその通りにサービスをする。
オプションでパンストを破ったり、ローターを使ったり、穿いていたパンツのお持ち帰りもあった。
中学生のOL痴女。
あたしは必死に客の要望と店長の期待に応えようと、いやらしくて性に貪欲な女を演じたよ。
それを求められるのなら、あたしはどんなに恥ずかしくていやらしいことでもしてみせる。
フラフラと彷徨って、行き着いたあたしの輝ける場所。
そこであたしを更に輝かせてくれる人。
店長。
店長はあたしに特別に優しい。
レンちゃんに向ける想いとは違う感情があたしを動かす。
レンちゃんに会えば、必ずセックスをするのに。
「愛してるよ」と言われたら「あたしも愛してる」と平然と答えるのに。
女のあたしも嘘吐きで性にだらしなく単純ですぐに人間を欺く。
もう愛なんてわかんないや。
あたしにはそんなモン、必要ないのかもしれないね。
ただ、あたしは店長が欲しい。
欲しい欲しい欲しい。
欲しくてたまらない。
ヘルスで働くようになって1ヶ月後にはナンバーワンになっていた。
OLのコスプレをした自称18歳が卑猥な言葉や態度で責め立てて抜いてくれる。
年齢層の高い店の中で10代があたしだけだからだろう。
単純にそう思っていた。
あたしは裏でなにが起きているかなんてなんにも気付いていなかった。
早番の最後についた客を見送ったのは18:00を過ぎていて、あたしが次の客のサービスのためにプレイルームでタオルをたたんでいるときだった。
店長がプレイルームに入って来て、あたしをマットに押し倒した。
「内緒だよ」
あたしは店長とセックスをした。
隣の部屋からは遅番のキャストがサービスを始めていて、演技だとバレバレな喘ぎ声が聞こえている。
店長の手で押さえられたあたしの口から漏れる声。
あたしは初めて、セックスでイッた。
この身体がぶっ壊れそうなくらい強烈な悦び。
それからあたしと店長は待機中の度にセックスをするようになっていた。
破壊力を持った快楽を知ったあたしは止められなかった。
あたしは欲しくてたまらなかった店長を手放したくないと思った。
あたし、ズルイかな?
お店ではナンバーワン。
店長の一番のオキニ。
稼ぎも生きていくには充分過ぎるくらいだったし。
客にもスタッフにもちやほやされてお姫様扱い。
最高だ。
レンちゃんはサラ金にも手を染め、毎日ギャンブル。
なにひとつ変わっていないのはレンちゃんだけだ。
あたしは?
あたしは、変わった?
誰か教えてよ。
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