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二月日記

二月日記(第1話)

萩原蔵王

筆者にとって特別な時期である二月。日常と了見を組み合わせた日記文学ここに誕生。

タグ: #リアリズム文学 #書簡体小説 #私小説

エセー

963文字

         二の六

 

   どうにも

文春ぶんしゅん*のオール讀物よみもの*が賞をしてしまった*から江古田えこだ*に代えることにした。折角い史小説の賞を見つけたと思ったのだが仕方あるまい。しかし逃したのはだいぶ痛いものである。他を当たろうにもどうにも原稿が圧倒的に足りない(まれに足りすぎる)から江古田で勝負することにした。部が二つる*から一方には小説で、一方には歌と詩にする心算である。こうして筆を執って四年余であるが、未だ一作も満足して筆をいてないことに憂いている(時折没作のあたりを見てみるのだがまあ酷い有様である)。どうにも最近は筆が進まん。詩集*なら終わった。一月前に書き終えた旅順は修正しているし、ろんどん塔はどうにもすすまぬ。詩集に関しては世に出せないのが至極悲しい。

 

   たくらみ

夜行列車やこうれっしゃというものを試みている。車内の人々の談話だんわという下らん小説である。しかし何も書かないまま日々を喰うのは好ましくない。気分もはなはわるい。それよりかは拙作を書いて解毒ディトックスした方が幾分いくぶんかマシである。文筆家ぶんぴつかとして大成する意思は薄い。己の得意とする範囲が時代に合っていないのが難儀なんぎである。これに関してはどうにもならん。趣味として書くことに意味がない訣じゃないから、筆を執ることに本気になったとて己が職を文筆家として本気になることはないだろう。それでも上梓じょうし*できればよしである。すくなくとも同じ思考の者に巡り合うまでは、己はただ文系職を楽しんでいることだろう。──抑々そもそも中学生の時点*で斯様かようなことを考えているのであるが。

 

文籍ぶんせき

最近読んだ本と云えば、ようやく夏目漱石の「それから*」を読了したことくらいだ。夏頃から読み始めて七か月。己は到底代助だいすけ*のような男にはならんと思うが、この先の人生の中で一人くらいはこのような男と逢うやもしれぬ。兄弟がなるのだけはご免である。誠吾せいご*の気持ちを味わいたくはない。とく*の立場にもなりたくない。誠太郎せいたろう*なら級友きゅうゆうにおもしろ可笑おかしく話すことができるやもしれぬ。しかし己は今、己の人生を案じている。と云うのも、実は正月に神社に参詣さんけいして神籖みくじを引いたのだが、そのときの恋愛欄に、「他人の中傷ちゅうしょうを受けるも成就じょうじゅします」とご丁寧に書かれていたのである。中傷を受けて恋が成就するとなればそれはそれは代助のようであるから、己は今二〇二六年という年紀としたまらなく怖ろしい。

© 2026 萩原蔵王 ( 2026年2月3日公開

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