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春霞

合評会2023年09月応募作品

松嶋豊弐

明治〜昭和あたりを意識した大阪での心中の散文詩です。

タグ: #古文 #古語 #大阪弁 #散文詩 #自由詩 #合評会2023年09月

389文字

薄刃のに藤は散る。

狂える鳥居の向こうに永久とこしえが眠りゆく。

「糸切り鋏が紡ぐよう、傀儡が回るよう、

うなされる夜の夢は誰にも分かれしまへんよってに」

お歯黒の笑みを残し、巫女は消えた。

 

あゝ、我がよ。

生皮剥がされた我らはけだものでおまっしゃろうか。

おゝ、帝国の遠き星よ。見てはりくださりませ。

人の過ちにより、甘う腐りゆくが如く遂に西空の黄昏は潰えます。

息も耐えだえに、まことが燃やされ溶けていく。

この世すべては我らがかたき

愛おしみの心は、流した涙は……血よりも濃い。

怨みも憎しみも枯れ果て、ひじりに至った空蝉うつせみ

「春は死ぬによい折節をりふし。わいと心中いたしまひょう」

 

鏡向こうの星影はさやか。

麗しの常世で巡り会うことを誓い、

痛まぬようにと、せめてもの慈しみをかけん。

さいなら、さいなら……。

今生こんじょう暇乞いとまごい。

勾玉双つは嬰児みどりごの如く砕かれた。

天地あめつち滴る岩座いはくら八咫鴉やたがらす立ち、乱るる神風を示す。

豊葦とよあし黄金色こがねいろにざわめくばかり。

© 2023 松嶋豊弐 ( 2023年8月8日公開

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"春霞"へのコメント 1

  • ゲスト | 2023-09-25 19:30

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