8.なす 紫の衣
夏の光を 一身に浴びて
あなたは 高貴な紫をまとう
磨き上げられた 深い闇のような
鏡のような その艶やかさ
ヘタの鋭い 小さな棘は
誇り高く 生きてきたしるし
雨粒をはじき 風を受け流し
みずみずしさを その身に閉じ込めて
外側の 凛とした静寂とは裏腹に
内側には 真っ白な雲のような
柔らかな 孤独がつまってる
どんな味にも 染まれるようにと
静かに 出番を待っている
火を通せば とろりと崩れ
蓄えてきた 大地の雫が
じゅわっと 溢れ出す
それは 季節が溶ける音
油の輝きを 衣に纏い
出汁の深みを その身に吸って
あなたは 静かに主役になる
涼しげな顔をして 熱を秘め
食卓に 夕暮れの彩を添える
あなたは 夏が残した
もっとも優艶な 一滴の影
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