メニュー

果実市

礼 室町

言葉に疲れて、ちょっと休憩したいとおもったとき
どうぞここへ来て、心をやすめてください。

543文字

害虫に食べられやすき 無花果いちじく

すり傷の如き赤い果肉

 

実が割れし柘榴ざくろをもげば 風呂場から

弾けんばかり女子の嬌声

 

大ふさの枇杷びわひとつ 手にとって

うぶ毛にわらう遅覚めのひと

 

鳥が集まる森の中の果物店に

人お断りの茱萸ぐみが熟れている

 

トカゲ来て葡萄をなめて走去ぬ

遠雷の鳴る積乱雲の下

 

カメレオンならこのお椀のごはんどう食べるだろう?

カメレオンのように固まる

 

好き嫌い多きカタツムリらしい

ごはん食べにゆくまで 立ったまま眠るウェイター

 

お椀いっぱいの 純白の喜びを奪うのが

無宿 小バエの日課となりぬ

 

庭先を夏蝶よこぎる家に 炊き込みごはんの香りしており

約束という言葉なつかし

 

潮騒に足つけてみる少女の 空に

シロクマ消えて 氷河広がる

 

日よけ帽の白き縁が地平ゆえに

少女の長いまつ毛がふれる夏枯草ウツボグサ

 

煙突高き風呂屋の汽車は 長屋を連れて走りおり

湯船の少女は校歌

 

家皆冷蔵ケースの人なき街路にペグマンを立たせて少女は

午睡

 

イチゴシロップパス ミルクもパス

透明のみぞれ指す少女の 手にアスピリンの青箱


作品をSNSで紹介しよう→

 

 

投稿作品数: 3

© 2025 礼 室町 ( 2025年11月23日公開

読み終えたらレビューしてください

みんなの評価

0.0点(0件の評価)

ログインすると、星の数によって冷酷な評価を突きつけることができます。

  0
  0
  0
  0
  0
ログインするとレビュー感想をつけられるようになります。 ログインする

著者

「果実市」をリストに追加

リスト機能とは、気になる作品をまとめておける機能です。公開と非公開が選べますので、 あなたのアンソロジーとして共有したり、お気に入りのリストとしてこっそり楽しむこともできます。


リスト機能を利用するにはログインする必要があります。

"果実市"へのコメント 0

コメントがありません。 寂しいので、ぜひコメントを残してください。

コメントを残してください

コメントをするにはユーザー登録をした上で ログインする必要があります。

作品に戻る