狂村の因習…THE誘拐

邪道キリシタン

小説

6,601文字

魅力的な若い女が理不尽にも、権力や、因習、暴力の魔手に堕ち、囚われる。
そして監禁され、恐怖と絶望の限りに苛まれ…そんなテーマに興奮なさったことはありませんか?
不条理な運命に弄ばれる淫靡に、猟奇的に、刺激的に描いてみました。

時は昭和50年、ここは北陸地方にある、淫蛮村大妄(いんばむらおおも)地区。その村はずれの駐在所二階にある、居住スペースに暮らす父と娘の一日が始まる。廣川恵美子は目覚めると、早々に体操着に着替える。人口400人にも満たないこの村では、秋の一日、村民がこぞって参加する運動会が開かれる。その準備に追われる恵美子は忙しくなる予感に、どこか胸を躍らせるながら、父親の太一郎の朝食を手早く作り終え、弁当を包み始めている。

「おはよ、お父さん!」

恵美子はなかなか端正な母親譲りの美少女フェイスに朗らかな笑みを浮かべる。

「お、張り切ってるなぁ、恵美子…。父さん、まだ眠いぞ」

ぼさぼさ頭で新聞を手に、椅子に腰かける父は欠伸交じりに言った。

 

「夕べも遅くまでお仕事だったんでしょ、夜更かしすると健康に良くないんだから」

チャーミングな口調で窘めつつも、母を早くに亡くしている寂しさを滲ます恵美子は、誰よりも父を案じている。

「はは、大丈夫さ。今日からの出張に提出する報告書を書き上げていたからね」

「そっか、お父さん。今日から出張ですものね」

今年春から、この地に赴任した太一郎は、三か月の勤務を終えた時点で小研修を受け、勤務の実績を県警本部に提出するため、3日間家を空けるのだ。

「戸締りだけはちゃんとするんだぞ」

のんびり屋の太一郎だが、愛娘を一人残しての出張は心残りらしい。

「大丈夫よ、この村の人はみんないい人だから」

天真爛漫で明朗活発。どこに行っても明るく友達もできる娘を、その点では案じてはいない。村長の計らいで恵美子のために高校生のいないこの地に、わざわざ専属の教師2人を赴任させるなど、有難いことだと感謝はしている。恵美子自身、自然豊かなこの地が好ましい様子で、週3日は村外の教育施設で課外授業を受けているし、成績は上々だ。いずれにせよ大学に進めば村を出ることにはなる。が、都市部からこの地に赴いた父としては、未開の地ともとれるこの村にどこか不吉なものを感じることがあるらしい。

 

「さ、お弁当を作っておきました! 遅刻しちゃうぞ」

と、父を促す恵美子。

「もう体操服なのかい?」

その言葉には、娘の着用しているブルマ、そして成長著しい若い肉体が今日という一日、人目に晒されることへの懸念が混じっていた。が、娘に、その危機感は皆無だ。

「ええ、一日運動会で大忙しよ! 着替える時間がもったいないくらい忙しいわ、きっと!」

「そのあとはあお祭りなんだっけな」

「ええ、そうみたい。今日は山神の遣いの行列、明日は夜宮…。あさっては本祭かな? 私もお手伝いをするの。すっごく楽しみ!」

恵美子は屈託なく微笑む。太一郎もしつこいまでに熱心に村の実行委員たちから参加を迫られたが、本日の研修を理由に断っていた。

「じゃ、お父さん、行ってらっしゃい!」

父のハンドルを握るカローラに向けて手を振る愛娘の姿に、父はにこやかに微笑む。

 

「はぁい、みんな、集まって頂戴――ッ!!」

おさげの髪を白いリボンで束ねた、快活そうな、ブルマ姿が眩しい廣川恵美子はすっかり村の子供たちのリーダーだった。

「これから、玉入れを始めまーす。お姉さんが笛を吹いたら、みんな、元気にバスケットにお手玉を入れるの。いい、たけしちゃんは紅組でしょう? 白組の陣地に入っちゃダメ、さ、始めますよ、ピリリリリーッ」

恵美子は、子供たちを指導する先生と、腕白坊主からおしゃまな女の子まで手広く面倒を見る保母さんという、たくさんの役割を見事演じ切り、甲斐甲斐しく、村の行事を進行させる。

 

「佳子ちゃーん、勝男くーん、ガンバぁ―――—ッ!!」

子供たちのリレーが始まると、応援席から赤白双方に分かれた子供たち両方に、優しい声援を送る恵美子。普段引っ込み思案で、目立たない子供により大きな応援をするのも彼女の人柄を表していた。やがて、村の成人も参加する村内対抗リレーが始る。運動神経も優れた恵美子もアンカーとして出場した。

「はいッ!!」

凛とした返事で、バトンを受け取った彼女は、通う高校指定の真っ白の体操着に、程よく膨らんだ乳房を浮かび上がらせ、力走した。エンジェルゾーンのかなり鋭いレオタードと見まがうブルマに包まれた臀部から、パンティの裾がはみ出し、そこから伸びる微かに日焼けした、瑞々しい素足を躍動させる姿は、本人の意図に反してなかなか艶めかしい。急な転校で、ブルマだけは、地方特有の洗練されぬその体操服が入手できず、まえの高校の物をそのまま履いていた。それが、かえって人目を惹き、特に女性に縁遠い村の男たちに劣情を抱かせぬといえば嘘になる。卑猥な妄想をしがちだが、昭和の少女は今とは比較にならないほど純粋無垢だ。ましてや、現代でいえば、黒い下着同然の姿で運動することが、男心を誘惑するなど夢にも思わない。ましてや田舎の因習に満ち満ちた邪な視線が、自分の姿を捉えているなど知る由も無かった――—。

 

恵美子の大活躍で、紅組は大勝利。子供たちと輪になって、形のない賞品を素直に喜びあう恵美子。

「恵美子お姉ちゃん、すっごいや!!」

「かっこよかったぁ」

と、子供たちは、優しく聡明なリーダーであり、お姉様を称賛しきりだ。

「いいえ、みんなで頑張ったからよ。リレーって、みんなが心を一つにしてゴールを目指すから強くなれるの。だから、勝ったときの喜びも大きいのよ!」

と、僅かに垂れ目の瞳を潤ませる。将来は小学校の教員を目指す恵美子は、すでに女教育者としての資質に目覚めていた。

 

時間は前後するが、父娘が和やかな朝を過ごしていたその頃、村のある場所では、邪な、そして背徳的な談合が開かれていた。

―――翌日は淫蛮村の、祭りだった。といっても奇祭、いや、淫祭とでもいうべきか。表向きこそ、山神遣いの行列は簡素な村の祭りだ。が、その実は違う。少女を生き雛に見立て、御内裏様よろしく村の男たちが、それを鑑賞するという『姫調べの儀』と称する逸脱した宴。村人の多くには公にはされていないこの奇祭は、この地を司る為政者の意思で開かれる魔の淫祭でもある。その目的は村の、大地の霊を鎮めるための―――これまた建前上であり目的は別にあるが詳細は後述しよう―――秘めたる淫事でもある。ここで問題とすべきは、その標的が、この物語のヒロインであることだ。

 

「恵美子はすっかり色づいてきましたな、熊倉さん。肉体の発育もさながら、近頃の表情は、明らかに快楽に白い肌が紅をさした様子が妄想できますなぁ。程よく食べごろの娘が、よくぞ村に入ってきたものです」

村の顔役が、重鎮熊倉に醜い媚顔を向ける。

「ですが、都会育ちだけあってなかなか聡明で逆の意味ですれていない…。言いなりになりますかね?」

男の一人が不安げな表情だ。

「フフフフ、どんな娘であろうと、一度仕込めば体が覚えるのさ、その恐怖に耐え忍べる者はそうそういない…。屈しなければ村の秘密を守るため…」

これまで数々の女を奇祭の餌食としてきた老人は、恵美子の瑞々しい姿態を妄想し、卑しい笑みを浮かべる。

 

「まあ、そうならんことを期待する。18歳…女が一番光り輝く年齢。4年に一度の生贄には、これ以上ない上玉だからな、あの娘は」

「明後日は‘姫調べの儀’だべ。準備の方は良いのか?」

18歳の美少女の肉体に異常な執着を見せるいまだ女を知らぬ中年男、味田は奇祭で拝むことのできるであろう乙女の姿に、想像をたくましくする。兎にも角にもその祭りの生贄に選ばれたのは、廣川恵美子であることは事実だ。その穢れ無き肉体と心を持った乙女に、邪な手が忍び寄るときが刻一刻と迫っていた。

 

教え子のように可愛い児童たちと喜びを分かち合った後、無事運動会はオヒラキとなった。今宵は、村を挙げての夏祭りも兼ねている。グラウンドからも見える神社に続く沿道にはぼんぼりが灯り始め、僅かながら人影も見える。この村では四年に一度だけ、神社裏手にある祠から、山の裏手にある海沿いの村はずれの櫓まで、山神の遣いの魂が籠るとされる小さな神輿を行列が運ぶのだ。それに手を合わせることで無病息災を祈るのがこの村の人々の習わしでもある。

「いいわ、みんなは一度おうちに帰ってからお祭りに行ってね。お姉さんも後から行くわ」

みんなと仲良く手を振って別れた恵美子に少々大人びた少年が声を掛けた。

 

吉越慎太郎。小学校の校長先生の孫で中学二年生。利発な彼は、少々表情を曇らせたまま、三年分お姉さんの恵美子に歩み寄る。

「恵美子さん、知っていましたか?」

「何を、かしら。慎太郎くん?」

恵美子は、聡明そうな貌を少々傾げ、年下の男の子に優しく尋ねる。少年はそんな幼児を扱うような美少女の態度に、少々苛立った様子だっが、静かに口を開いた。

「四年に一度、この村でお祭りが開かれる夜は、必ず村人がいなくなるって言い伝えがあるんです」

「まァ、それは怖いわね」

子供の与太話と、真に受けていない恵美子の様子を察してか、慎太郎は肌も露わなうら若き乙女にさらに歩み寄る。

 

「恵美子さん、気を付けたほうがいいです…」

「ええ? 私が?」

何時になく真剣な慎太郎の表情に、恵美子は戸惑った。子供ばかりを相手にしている日々で、この14歳のどこか大人びた表情の少年に性的な匂いを感じ取ったからだろうか。

「どうしてかしら?」

恵美子は小首を傾げて問う。微笑んだままではある、がしかし、少年は真剣なまなざしを恵美子に向ける。

「恵美子さんて…処女…でしょ?」

少年は逆に羞恥心をかみ殺すような声音で絞り出す様に言う。

 

「まあ、どうして…そんなことを訊くのかしら? 慎太郎クンには、まだ早いわよ、そういうお話は」

「消えた村の女の人って…みんな処女だって噂だったんです。そして全員18歳…恵美子さんに・・・僕この村からいなくなってほしくないんだ…だから…」

慎太郎は、さらに強い眼差しを向けてくる。が、大人である分、恵美子は取り合わなかった。神隠しなどあろうはずもない。何某かの理由で、村人に別れを告げず、この地を去っただけ、そう思い込んでいた。

「心配してくれてありがと、慎太郎クン。でも大丈夫よ、私はどこへも行かないわ。さ、小学校のみんなが、慎太郎お兄ちゃんを待っているわ。私も支度を終えたら、あとから行くから」

恵美子は優し気に微笑んだ。その後も、日が落ちかけた校舎裏に一人残り、片づけをする彼女は、そのうら若きブルマ姿の肢体を狙う男たちの視線に気が付くことはなかった。

 

半袖の体操着に紺色のブルマ、その露出した18歳の乙女の素肌は昼間の活躍で、程よく日焼けしていた。甘い体臭と微かな汗の香る美少女は素足のまま、校舎に戻ると帰り支度を始めた。

「さ、急がなくっちゃ! みんな待っているかもしれないもの」

校外でも村のお姉さんを自認する恵美子は、祭りの行列見物の保護者へと気持ちを切り替えている様子だ。が、その恵美子に背後から忍び寄る影…。

「恵美子さん…」

「あ、ああ、松永先生」

薄暗い校内で、突然声を掛けられた恵美子は少々、安堵した。馴染みある小学校の松永教頭だ。が、すぐに、恵美子の柔和な表情が強張る。彼の背後には見覚えのある三人の男がいた。男達はこれから神事に参加するため、白装束姿だ。が、その聖なる衣装とは裏腹に異様な殺気を放っている。いや、殺気というのは不正確かもしれない。明らかに獲物を狙う不逞の輩、さらに言えば恵美子を性的な標的とし、その瑞々しい肉体を狙うヒト化のオスとしての臭気を放っている真実だった。ともあれ、狭い教室内で4人の男に取り囲まれ、逃げ道を塞がれていくことに、経験したことの無い恐怖を覚える恵美子だ。

「今夜はね、山神の使いの行列の夜…個々の山神は実は男なんだよ。その霊を鎮めるためには4年に一度、生贄が必要なんだ…。そしてその生贄を‘身体検査’…すなわち、姫調べの義を今宵、執り行うわけだ」

校長はそれだけを言うと、背後の男たちを促す。純粋無垢な恵美子にも、その生贄に自分が選ばれつつあることをひしひしと感じ始める。素足の踵を浮かし、後ずさりをする美少女。その背中に教室の壁が当たる。もう逃げ場はない…。

 

それは‘秒殺’いや、‘瞬殺’というに相応しい、鮮やかな、いや残酷な所業だった。

「な、何か…みなさん、私をどうする気ッ? …こ、怖い…こ、来ないでッ…あうッ!」

体操着にブルマだけのある意味、卑猥な姿の恵美子の肉体が、くの字に折れる。突如目の前に現れたのは、馴染みのある一人の農家の倅だ。日頃、朴訥な彼は一人の少女に対し暴挙に及ぶ。強烈な拳を鳩尾にもらい、美少女フェイスが苦悶に歪んだ。当身…急所を狙い相手の意識を消失させる荒業だ。が、ドラマでもなければそこまで上手く相手を失神などさせられない。恵美子も激痛に蹲ったが気絶はしていない。しかし、ここからが村の男達の狡猾、かつ残酷なワン・チームのプレーが一人の美少女を恐怖の入口へと誘う。男らの中でも、畑仕事で鍛え上げたもっとも強靭な体躯の持ち主が恵美子の背後に回り込み、その細い首筋に丸太のような腕を巻き付ける。

「う、う…うぅ…く、苦しィ…」

恵美子の愛くるしい貌が激しく歪み、両手で藁にもすがるような所作を見せ、その苦しみを表現する。ブルマから伸びる太腿を捩じらせ、爪先を床に突き立て苦痛を堪える。みるみるうちに恵美子の美貌が蒼白になっていく。しかし、男は残酷だ。恵美子の意識が遠のくと、それを察した様子で締め付けを緩める。が、解放されるかという微かな期待を抱き始めると、すぐさま再びその頸動脈を圧迫しにかかり、少女に苦痛と恐怖を与え続けるのだ。逃さず、落とさず、生殺しの要領でじわじわと恵美子をいたぶる。殺されるという危機感より、殺されるかもしれぬ、という感覚の方が恐怖をより増幅させることを計算したような手口だ。結局のところ、恵美子は三度も失神しかけ、抵抗する体力も気力を奪い取られていった…。

 

数分後、恵美子は虜の身となった最初の恐怖をとくと味わう羽目となる。それは小さな柩のような漆黒の神輿だった。山の神を鎮めるための生贄を幽閉するための籠の、観音開きの木扉が開かれ、今まさに今宵の犠牲者を迎え入れんとしていた。村の男たちは農作業に慣れきっており、荒縄を意のままに操り、縛りも上手い。廣川恵美子はそのうら若い肢体を寸分たりとも動かすこともままならぬほど、厳しい縛めを受けた。まずは後ろ手に回され、高手小手の要領で厳しく緊縛される。腕に荒縄が食い込み、身悶えるだけで激痛が走る。半袖の白い体操着に厳しく食い込んだ荒縄が、発育中の乳房の形を露わにした。上半身を縛られるだけでも少女には大変な苦痛であろう。が、男たちは生贄をさらに追い詰めるように、その瑞々しい肉体の自由を奪う。すらりと長い脚は、シューズも脱がされ、素足にされている。乙女が決してとらない姿態、男子の座禅の如く、胡坐を掻かされたように足首を組み合させれ、ソコをまた荒縄で結わかれた。鋭角の度合いが高いブルマの裾からは、完全に白いパンティがはみ出している。あられの無い美少女の緊縛絵図が完成した。恵美子はまるで達磨の様に手足の自由を失った。

 

気の毒なことに恵美子は散々いたぶられたのち、すぐに蘇生した。いや、あえて男たちの残酷な‘計らい’で半失神させられたままだったのだ。縛りを受ける間もその意識は案外鮮明で、抵抗する気力はないものの、肉体が男たちの支配下に置かれる恐怖を、ひしひしと感じながらされるがままに虜の身となる運命を受け入れていたのだ。

「わ、わたしを…どうなさるんですか…?」

蚊の鳴くような声音で、哀願するように残酷な誘拐の首謀者を哀願するように見上げる恵美子。被虐美に満ちたその愛らしさに男たちのやましい視線が突き刺さる。

「言っただろう、今年の祭りの主役はお前さんだとね」

松永教頭は邪な笑みを見せ,最後の仕上げを命じる…。

「さあ、この娘に猿轡を噛ませなさい! キッチリと固く瘤付きの物を、ね」

大きな結び目がついた黒い布を、恵美子の薄ピンク色の唇を分け入って口内に侵入した。頬の肉が引き絞られるように絞めあげられ、美少女の轡貌が完成する。同時に、恵美子の綺麗な瞳からひと雫の涙が零れ落ちる。これから受けるであろう、不条理な運命など予測できるはずもなく———。『完』

2021年10月29日公開

© 2021 邪道キリシタン

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