「秋来ーっ!見て。どう?」
「……ッ!なんだよ!……これ、ハルじゃん」
私が話しかけると秋来は眉に皺を寄せる。太陽を直視してしまった時の顔。
「そう!今度のハンドメイド展に出してみようかな」
「……いいじゃん。見事だな」
あとセリフに「……」が多い。点の数だけ言葉が重くなるが、私のセリフの枠が減る。
「そりゃあ、10年以上やってるからねっ!」
「年数だけじゃないと思うぞ」
「あっ、ここがもうちょっとこう……!」
片目を閉じ、中指でハルを指して輪郭をなぞる。
「オッケ!来た!アイルビーバック😎」
「工房」へ駆け戻る。
♡
「できた!どう?」
「おお……これは、すごい。」
「それだけ?」
捻りの効いた顔をしているが、言葉は無回転。
「あー……あれだ、アートって感じ。」
「それだけ!?ぷんっ!」
工房へ戻り、作品をデスクライトの下に置く。夜の涸瀬川のような銀線の毛並みと、その下に存在しない筋肉の弾力が見える。
——「ぷんっ!」
「……」
デスクに置いた鏡を見るとそこに映った女が「あと五年はいける😉」と微笑んだ。
「ハル!サンキュ。おやつあげる!」
尻尾をフリフリして喜ぶハル。
「……ハル、散歩行くか?」
秋来が言い出す前に私はハルの首輪とリードを壁のフックから外していた。
「ズルいっ!私も行く!ネタ探しだっ!」
玄関に積んだ、ハルが壊した物を詰め込んだゴミ袋の中に、秋来とお揃いで買った獣の尻尾付きのアナルプラグがチラッと見えた。
♡
「ハル、引っ張るなって!」
涸瀬川の河川敷に降りる細いコンクリートの階段。降りたら左に曲がって草むらに入り、川に大きな中洲があるところまで歩く。
「ハルはパワフルだねえ」
秋来がなんかモゴってる。今日の川は水量が多い。
「え!?なに!?」
「……作品、売れてるのか?」
「全然!競合多いし、必需品でもないのに高額だから」
「アートだからな。あれは。もっと上げてもいいと思うよ、値段」
「ありがと!でも、まだまだクオリティ低いし。上には上がいるし……あ!何あれ!?」
川の中洲に何かいる……!
「どぶぅッ!!あぶぶぶーッ!!」
つられてダッシュしたハルに秋来が引きずられた!
「大丈夫っ!?怪我した……!?」
「いてて……」
♡
「立派な翼、長い首……かっこいい鳥だね……」
「カワウかな。ウミウかも。顔見えないから分からん」
その黒い大きな鳥は、私たちに背を向け、夕陽を浴びて羽を広げていた。それはこれから始まる惨劇を——」
「……なんか言った?」
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