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春06|アイの楽園—俺と彼女が犬に食べられるまでの365日

アイの楽園(第6話)

全滅

「ファッッッッ!?!?!?」

タグ: ##純文学 #SF #サスペンス #ホラー

小説

739文字

6.自室屋ノ楽園

昼白色のLEDに暴かれた部屋は朝よりもマシに見えた。蛇口を捻ると、湯が冷えた手の骨に染みる。

残った方のカーテンを閉めた時、窓は割れていないことに気づいた。ホームレスになったわけじゃない。逃げずにドアを開けられたじゃないか。

嘘だ。ドアを開けられたのはハルが——黙れ。どうでもいい。

倒れた冷蔵庫を力任せに起こす。ガチャガチャと中身が暴れ、隙間から何かの液体が漏れたが、もう立ってさえいればなんでもいい。

床一面に破れた本と服、そこに混ざった土と食品……つまりこの部屋の全て。いや、食器棚は無事だ。

ビニール袋を広げ、足元にあった白菜の切れ端をぶち込む。

脂ぎって破れた靴下、ショットガンで撃たれてトラックに轢かれたみたいなプラケース。淡々と袋に突っ込む。

——

いつか夏生にプレゼントした恐竜のマスコットは、乾いた唾液と白い綿と緑の布の塊になっていた。夏生が二週間かけた作品は原型すら思い出せない。

ソファーのクッションを押すと、ジュクジュクと嫌な汁が指を濡らし、真っ二つに折れた木の脚のささくれが服の袖に引っかかる。

いつのまにか俺は床に座り込み、手に貼り付いた床のワックスをペリペリと無我夢中で剥いていた。

——部屋の隅が、影が動いた。

「ハル。」

肩を揺すりながら、破壊神が王者の足取りで歩いてくる。

「ハル、おいで。」

お前は何も悪くない。ただ生まれ、知らない場所に連れて来られ、懸命に生きてるだけだ。俺と同じじゃないか。

ハルの厚い首元の毛に指を沈ませると、ハルは暖かく湿った舌でその手を舐めた。

胸にゴロッと詰まったものが上がってきて、唇が僅かに震え出す。目と鼻が抗いがたく熱い。

ハルの姿が滲み……じんわりと全てがほどけて……暖かくて……

そう、暖くて……

「ファッッッッ!?!?!?」

© 2026 全滅 ( 2026年2月1日公開

作品集『アイの楽園』第6話 (全14話)

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