XVIII
こんばんは。久しぶり、なのかな。
ボクは君のことを知っている。君もボクのことを知っているよね。
君が暗がりの中で、小さく頷いたような気がした。
きっと君もボクを探していたんじゃないかな。そんな気がするよ。
ボクは気がついたんだ。君がもう一度ここに現れるのを待っていた。理由はわからないけど、ボクは君を待っている役なんだ。だけど、君はボクにとってどんな役なんだい?
君はボクにはわからない言葉をつかって、ぽつりぽつりと呟いていた。それがボクの疑問に対する答えなのかもわからないけど、心の奥では、君の呟きが意味を持ち、ボクのわからないところで、ボクは無意識のうちに納得していた。
そう、そうなんだ。
ボクはボクの言葉で話す。
ボクらは惹かれ合っていたのかもしれないね。あれはいつだったのかな。出会った時のことを思い出すんだ。君とボクの出会いには偶然以上の何かを感じるんだ。運命的な、なんていうとちょっと大げさだけど、君とボクが出会うことは、あらかじめ予定されていたんじゃないかな。もちろんこうして再会することも織り込み済で。
ところでこの再会は何度目なんだろう。
ボクらは何度も出会っては別れ、出会っては別れを繰り返しているような気もするんだ。そして、それはいつも此処なんだ。違う場所、違う時間だけれど、君を前にするのはいつも此処。約束したように同じ時間と場所に迷い込んで、こうしてしばらくの間、お互いに理解の出来ない言葉を交す。きっともうしばらくすれば、此処は此処でなくなって、君は君の場所と時間へ戻るんだろう。ボクも同じ。お互いを理解して、確かめ合って、気持ちをひとつにして。でも、そんなことも忘れてしまう。ただ、約束のような気持ちを交したことだけは仄かに覚えていて、それでも普段はほとんど忘れているのだけど、降って湧いたように突然とても落ち着かなくなる。きっときっかけはあるんだよ。思い出さなきゃいけない理由があるんだよ。
君と向かい合っていると、どうしてだろう、ボクがボクであることなんて些末なことのように感じるんだ。もしかしたら、君もかな。
ボクは君の中にボクを見つける。
君もボクの中に君自身を見つけている。
君とボクの境目が曖昧になるんだ。
もしかするとね、君とボクはもともとひとつじゃなかったのかな。だから、どんなに言葉が違っていても理解できる。きっと言葉なんて必要なくて、声を出すのはただの儀式みたいなもので、どんなにでたらめを喋っても、結局、同じところにたどり着くんだ。ボクらはボクらが理解できない次元で理解している。そう、だよね。
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