カナタの彼方。

カナタ

エセー

1,011文字

いじめられているようでいじめられてない、可哀想なようで自業自得なわたしの「今日」という名の彼方です。

わたしは折り紙を折るのが大好きでした。

わたしは「三ツ首のツル」という折り紙を作っていました。

わたしは「つる、つくってね」と書かれた職員室の前にあるボックスの中を見ました。

「・・・ツル」

◆  ◆  ◆

わたしは友達のKさんと同じく友達のTさんにも折り紙を貸してあげて、三人でツルを折りました。

キャラクターがかかれた、クリアファイルの中に折り紙を入れて。

そしてわたしが外に出ている時────事件は起こりました。

「・・・あれ?待って・・・折り紙が、無い・・・」

わたしが取ってきた折り紙が、消えていました。

それを取った奴は解っていました。

Iさんです。

◆  ◆  ◆

「ボランティア委員会が用意していた、ツルのための折り紙が不正使用されていました」

ボランティア委員会の委員長のSさんが、帰りの会、「皆からのお知らせ」の際、そう発表しました。

そしてボランティア委員会副委員長、Iさんがわたしをぎろりと見て、言いました。

「これが不正使用犯の使っていたファイルでーす」

いつの間に。

わたしは穴があったら入りたくなりました。

きっとKさんやTさんもそうだったでしょう。

◆  ◆  ◆

わたしは知らんふりをして帰ろうとしました。

しかし。

Iさんはそれを許しませんでした。

「おい、カーナーター」

Iさんは小柄ですが、怪力で怒りっぽく、わたしは苦手でした。

Iさんは私のランドセルを掴みました。

「逃げようとしてんじゃねーよ。お前のだろ、あぁ?」

わたしはそれが彼の「キャラ」だと知っていました。

早い話、彼は自分が強い存在であると見せつけるため、わざとこんな言い方をしているのです。

わたしはそのことを知っていたから、そこまで怖いとは感じませんでした。

「うん、そうだけど」

「ツルじゃねぇもん作ってんじゃねぇよ」

わたしは笑いそうになりました。わたしが折っていたのはツルです。三ツ首の。

「ツルだけど。ほら」

わたしは二匹のツルを見せました。

するとIさんは、

「そういう問題じゃねぇよ」

と言いました。

「一日中折ってたにしてはすくねぇなぁ?おい、なんとか言えよ」

わたしはだんだんふつふつと怒りが込み上げてきました。

お前らが捨てたんだよ。

わたしが席を立った時、

「何この席、ゴミだらけじゃん」

と、私が折ったツルを捨てていました。

ですが、私がそういう前にIさんはわたしのランドセルを掴んでいた手を離しました。

「もうめんどくせぇからいいわ。帰ろ」

彼はとても飽きっぽかったのです。

 

これは、全て事実です。

2024年12月18日公開

© 2024 カナタ

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