冤罪が疑われている事件の考察動画って面白いっすよね

名探偵破滅派『兎は薄氷に駆ける』応募作品

諏訪靖彦

エセー

1,208文字

2024年8月名探偵破滅派応募推理。お題は貴志祐介『兎は薄氷に駆ける』

 

警視庁では現在、本書に書かれているような苛烈な取り調べは皆無だと聞いているが、それは置いておいて推理を進めよう。

 

推理する上でまず定義しなければいけないのが平沼精二郎の死因である。自殺、事故死、他殺のいずれかであるが、私は自殺を選択することにした。そして、自殺をほう助したのが日高英之である。

英之の上司であり平沼の友人である藤枝敦は証人尋問で、平沼の性格は厭世的であり希死念慮を抱いていたと語っている。その原因となったのは石田うめ殺害及び英之の父を犯人としてしまったことである。その贖罪の意識から石田うめの娘に毎月金を送金し、英之の面倒を見るようになった。

英之は石田うめ殺しの真犯人が平沼であると気付いたあと、平沼の希死念慮を利用し罪悪感で背中を押し、自殺するように仕向けて同時に警察や司法に復讐することを思いつく。あえて警察に付け入るスキを与え司法の場で父の無実を証明しようと考えたのである。その計画のために、恋人である大政千春と本郷誠弁護士、そして平沼自身にも協力してもらうことにした。

自身に疑いが向くように頻繁に訪れていたコンビニ店員伊東陽菜の証言から事件当夜、英之がコンビニを出た後に道を間違えて引き返したことはなく、平沼の家に向かったのは間違いない。そして平沼から預かっていた鍵を使いガレージに侵入し、平沼の宅で車の鍵に自分の指紋をつけて平沼の帰りを待った。その際に警察が言っていた平沼宅近くの防犯カメラに英之が写っていたのなら、無罪を勝ち取ることが難しくなるが、これはブラフであろう。英之は防犯カメラに写らないように事前に防犯カメラに何かしらの細工をしたか、防犯カメラの撮影範囲外で平沼宅に侵入したかどちらかだが、その方法は思いつけなかった。そして平沼帰宅後は事前に打ち合わせしていた通り平沼は寝室へ向かい、眠ったあとに英之が車をランオンさせ平沼宅を後にした。

ここで問題になるのが千春宅でのビデオ映像であるが、今の時代旧式のビデオカメラを使い日常を撮影するのは考えづらくアリバイ作りに作成されたことは間違いないだろう。しかし、加工映像で検察を欺くのは難しい。そこで大胆な推理を展開する。深夜アニメの放映時間から日時を特定して証拠とした。だが、撮られたのが千春宅ではなかったらどうだろうか。深夜アニメは地域によって放映時間が異なる。あのビデオカメラ映像は千春の家ではなく別の場所で別の時間に撮られた映像だったのだ。事件当時、千春宅の近くで救急車が出動ていたことも本郷弁護士は調べていたため、撮影時に救急車も呼んだ……。などと考えたが、今の時代、深夜アニメは放映後であればいつでもネット配信で観られるため、後日千春宅で撮られた映像だろう。

 

以上が私の推理である。裁判の結果、英之は無罪を勝ち取り(自殺ほう助で再起訴されることもなく)、父の無罪を証明し物語が終わる。

 

2024年8月19日公開

© 2024 諏訪靖彦

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