ネコババ日記とは。
10月のある日、私は昼寝をしていた。
ごそごそ3時頃起き出して何か食い物を買いに行こうと線路沿いの道を歩いていた。線路の反対側には小さな公園があり、子供達がきゃーきゃー歓声をあげてブランコやすべり台で遊んでいた。
(楽しそう…)私は子供達が羨ましくなった。あんな風に無邪気に笑う事なんて私はこの先一生ないだろう。
私はうつむいた。
ふと生け垣の下に見慣れたものが落ちていた。草の隙間に場違いなもの。
千円札だ。
私は千円札と認めた途端しゃがんで素早く拾った。つまり、ネコババしてしまったのである。しゃがんだ時、千円札の奥にもう一枚千円札が落ちているのを見た。私はそのまま歩き出し、千円札をポケットに入れて冷や汗かきながら歩き続けた。あの場所には二千円落ちていた。
私は千円だけ拾ったという事だ。
私はスーパーへ行き、拾った千円札でりんごジュースとピュレグミレモンとキムチと鮭の切り身を買った。
帰り道、またあの道を通った。
やっぱり千円落ちている。私の他に誰か気づかないだろうか。誰か拾ってくれないと私が拾っちゃうだろうが。
私はそれからしばらく千円ネコババしてしまった罪悪感に苛まれた。誰かが見ていて、ある日私の部屋のチャイムを押し私を問い詰めないだろうか。
おまわりさんが突然やってきて「貴様、金を盗んだだろう」と私を締め上げやしないだろうか。
こんなにびくびくするのなら、交番に届けるとか見て見ぬふりをすればよかったのに、自分の馬鹿と欲にほとほと苦しめられた。それで持て余した罪悪感でネコババ日記を書き出した。
毎日、金をネコババしてしまった罪悪感を書いていた。あの場所には一週間経っても千円札が落ちたままだったので、結局私が拾った。合計二千円ネコババしたのである。
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