薄刃の夜に藤は散る。
狂える鳥居の向こうに永久が眠りゆく。
「糸切り鋏が紡ぐよう、傀儡が回るよう、
うなされる夜の夢は誰にも分かれしまへんよってに」
お歯黒の笑みを残し、巫女は消えた。
あゝ、我が背よ。
生皮剥がされた我らはけだものでおまっしゃろうか。
おゝ、帝国の遠き星よ。見てはりくださりませ。
人の過ちにより、甘う腐りゆくが如く遂に西空の黄昏は潰えます。
息も耐えだえに、真が燃やされ溶けていく。
この世すべては我らが敵。
愛おしみの心は、流した涙は……血よりも濃い。
怨みも憎しみも枯れ果て、聖に至った空蝉。
「春は死ぬによい折節。わいと心中いたしまひょう」
鏡向こうの星影は清か。
麗しの常世で巡り会うことを誓い、
痛まぬようにと、せめてもの慈しみをかけん。
さいなら、さいなら……。
今生の暇乞い。
勾玉双つは嬰児の如く砕かれた。
天地滴る岩座に八咫鴉立ち、乱るる神風を示す。
豊葦は黄金色にざわめくばかり。
退会したユーザー ゲスト | 2023-09-25 19:30
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