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べつにどうってことない

ateseu_630

実質的に家から追い出されたんだ。親が冬休みの間、親戚を泊めるとかでね。

小説

946文字

外に出たとき、風の寒さにやられた。時間つぶしに行った図書館は悪かなかったけど、静かすぎてぼくには耐えられなかった。

 少しでも暖まろうと、服の首元をぐいっと引っ張って顔を中に突っ込み、温かい空気を吸い込んだ。顔がもう冷え始めてたから、そうしたんだ。

 これから行く先もなかった。親から実質的に追い出されたんだ。旅行に行くとかでね。だからお金だけぼくに持たせて、おばあちゃん家ちまで行ってらっしゃい、だってさ。ぼくはおばあちゃん家ちなんか行くつもりなんて、はなからないさ。だって、何もないんだから。近くに同年代の子がいれば、よろこんで行くさ。そいつが知らないやつでもね。でも、いるのは成人したやつか、生まれたばかりで歩けもしないような子しかいないんだ。

 とにかく、行くあてもなく雪を踏みしめながら歩いてたんだ。途中で、どこかで温かい飲み物か何かを買おうとして、小銭を握りしめてた。でもさ、自動販売機が一つもないんだ。手がひどく冷たくて、曲げることにさえ困難に感じるようになってきてたから、うんざりしてきちゃったよ。手袋は家で探しはしたんだけど、結局見つからなかったんだ。どうせ、ねずみかなんかが持ってったんだ。ねずみなら許すよ。ぼく、ねずみが主人公の本を読んだことがあるんだ。どぶねずみなんだけどね、かっこいいんだ。まあ、とにかく手を引っ込めてても、首に手を当てて何とかしようとしても意味がなかったんで、結局道端にあった店に入ることにしたんだ。

 「店主、何かあったかい缶の飲み物はあらへんかね?」ぼくは口を開けばなまりが出てしまうんだな。いなかもの丸出しさ。なおせやしないよ。

 「よお、にいちゃん。今日はよく冷えるだろう? ココアならあるぞ」

 ぼくはすぐにそれを買った。店の中のイスか何かに腰掛けて、手を必死に温めてたんだ。その店は個人経営みたいなかんじで、こじんまりしてた。でも、なんだか落ち着く場所だったよ。

 十分かそれぐらいしてから店主に会釈して店を出ていった。出たって行き先はなかったんだけどね。

 また風が吹き付けてきたんだ。しかもさっきより強い風。だから、とりあえずどこかでマフラーかスカーフか、何か首に巻けるものを買おうと思った。思い立った足先のまま、また体が参ってしまわないうちにと、商店街か服屋を探した。

© 2026 ateseu_630 ( 2026年10月10日公開 )

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