メニュー

春04|アイの楽園—俺と彼女が犬に食べられるまでの365日

アイの楽園(第4話)

全滅

嘘だ。子音の牙が抜けてる。

タグ: ##純文学 #SF #サスペンス #ホラー

小説

626文字

4.嘘ノ楽園

—— MEMORY_FREQ: 432 Hz ——

「え!なに!?えっ!?」

夏生の素直すぎる反応に俺は舌打ちした。聞かれないよう、扁桃体のあたりで。23歳で出会った時から癖になっている。

「SNSで無料。近所だし、こんなチャンス二度とないからな。ハルシオン、来い!」

呼ばれた黒い犬は、勝手に自分の巣にしてしまったカーテンだった布を、ビリッと噛みちぎった。

「犬種は?」

「ウルフドッグ。2歳の雄。」

——「本当にいいの?」と、飼い主の男が顔の右側だけで笑いながらリードを差し出したのを思い出す。

「ハル君、夏生だよ!ナ、ツ、キ。よろしくね!」

この女は、礼節という仮想通貨を犬が受け取ると思っているようだ。

「賢そうじゃん。なんか、秋来に似てるし。」

「似てねえし。」

襞のある硬口蓋が丸見えになるぐらい大きく口を開けて、ハルがあくびをする。「ヒィン……」という音が声なのか吸気音なのかはわからなかった。

「てか」

「なに?」

「27歳のプレゼントだよ。犬飼いたいって言ってただろ。その、子供は無理だし、せめて。」

嘘だ。右上の奥歯が浮いた。

「覚えてたの!?嬉しい!」

嘘じゃない。歯茎が見えてる。

「喜んだ?」

嘘だ。子音の牙が抜けてる。

「うん!喜んだ!」

嘘じゃない。夏生の頬の筋肉には嘘をつく機能がない。俺の首に腕を回し、頬を寄せる。

「よかった。」

……嘘じゃない。同棲して5年、俺はこいつの笑顔にずっと絞め上げられている。

——TUNING: >>> 440 Hz ——

© 2026 全滅 ( 2026年1月31日公開

作品集『アイの楽園』第4話 (全14話)

読み終えたらレビューしてください

みんなの評価

0.0点(0件の評価)

ログインすると、星の数によって冷酷な評価を突きつけることができます。

  0
  0
  0
  0
  0
ログインするとレビュー感想をつけられるようになります。 ログインする

「春04|アイの楽園—俺と彼女が犬に食べられるまでの365日」をリストに追加

リスト機能とは、気になる作品をまとめておける機能です。公開と非公開が選べますので、 あなたのアンソロジーとして共有したり、お気に入りのリストとしてこっそり楽しむこともできます。


リスト機能を利用するにはログインする必要があります。

"春04|アイの楽園—俺と彼女が犬に食べられるまでの365日"へのコメント 0

コメントがありません。 寂しいので、ぜひコメントを残してください。

コメントを残してください

コメントをするにはユーザー登録をした上で ログインする必要があります。

作品に戻る