2.惨劇ノ楽園
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「るっ!」
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乾いた咽頭に貼り付いた舌根が剥がれる。「愛してる」女の顔は、粘膜が裂けるような痛みに霧散した。
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って——!
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「特売の豚コマ肉が全部──『血ノ果実』も三本──!」
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モニターはうつ伏せに倒れ、5年育てた金柑と、“部屋が小洒落て見えるらしい”モンステラの鉢が土をぶちまけている。
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窓から差し込む光が床に散らばった電球の破片を煌めかせ、ソファーからは黄色いウレタンが脂肪のように飛び出し、ズタズタに垂れ下がった壁紙は鞭打ちの刑にあった背中の皮膚のようだ。
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「い゛ッッ!!」
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足の裏。千切れた電マのコードが吹く青い火花が、墓石のように倒れた冷蔵庫の白い側面を照らす。
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「……って、時間ッ!」
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スマホのアラームの停止ボタンを叩く。画面の右上から冷たく俺を見下ろす「11:23」。
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着信の「③」を見て俺は、スマホを床にわざと落とした。
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"春02|アイの楽園—俺と彼女が犬に食べられるまでの365日"へのコメント 0件