9.じゃがいも 土の記憶
ごつごつとした 泥だらけの拳を
土の中で ぎゅっと握りしめて
あなたは 春が来るのを待っていた
華やかな花を 咲かせるよりも
誰にも見えない 暗闇の中で
命の蓄えを 太らせる道を選んだ
その寡黙な たくましさ
幾つもの『芽』という名の 瞳を持ち
土の重みを 全身で受け止めながら
太陽の代わりに 大地の熱を
デンプンの粒に 変えていく
厚い皮を 脱ぎ捨てれば
現れるのは 飾らない乳白色
煮込まれて 角が取れるたび
スープに溶けだす 優しい慈しみ
ホクホクと 湯気を立ち上げ
口の中で ほろりと崩れる時
伝わってくるのは 遠い大地の
懐かしく 飾らない温もり
派手さわないけれど 揺るぎない
あなたの ずっしりとした重みは
日々の暮らしを 足元から支える
土が結んだ 祈りの形
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