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交尾と愛と青春

瀧上ルーシー

青春のひとこま。

小説

2,030文字

大樹は狭い居酒屋で男二、女二で早い時間から飲んでいた。

その内一人のユリにはLINEで好きだ! 結婚してくれ、と散々言ってきたし、大学も同じ。飲み会の前に二人きりになると、お前は美人だ、といった内容のこと宣っていた。頭の中ではわかっている。美人に美人と言って何になる? そんなこと本人も知っているし、今までの男からの扱われ方と同じでうんざりするだけだろう。

元からよくある好きな女をいじるのが大好きで、飲み会でこの人3P経験者なんで!(大嘘) やら、今日もユリでシコりました! など、クソ寒いことを連発している大樹だが、ユリはときには笑い、時にはいい加減にしろ、と目が笑っていなかった。ユリのその唇、その目がたまらなかった。人生はつまらないと言っているような目だった。

笑いもするし、話もする。だがユリはどこか、このつまらない世界で生きることにうんざりしている雰囲気があった。まだ大学二年で二十歳なのに、その達観ぶり、冷めた感じがひどくそそった。ハイヒールでポコチンを踏んでもらいたいとまで大樹は思っていた。それ以前に大樹は童貞なのだが。

「二杯目何にする?」と皆に聞きスマホで注文する。レモチューグレフルサワー生生となった。ここは酒の値段が安いが見た目だけジョッキで中身の量が少なかった。

「チューハイって氷抜きって言うと、酒の量が増えるんだぜ」

なんて大樹はしったかぶる。ユリは愛想笑いすると、店員を読んで自分が頼んだ分のグレフルサワーを氷抜きにしてくれと頼んだ。

もう一人の男の山崎は地蔵になっていた。こいつもこいつでバキバキ童貞だった。無言でカパカパ酒を飲むと六杯目で潰れた。

ユリは酒が強かった。大樹も七杯目ともなると、飲み方がゆっくりになるのだが、このタイミングでユリは日本酒をカパカパ空けるようになりやがった。どういう成り行きなのか、山崎はもう一人の女と消えていった。テーブルには三千円。足りないんだよ、バカヤローと思いつつ、俺が支払いすればポイント総取りか……などと割にあっていないのに大樹はほくそ笑んだ。

「ねえ?」

「なに?」

「大樹って私とやりたいの?」

「ん? どういう意図で言ってるの? ルースターズの曲の歌詞?」

大樹はへたれた。ここで期待してうまいこと言おうとして、男と女のラブゲームに敗れることを恐れたからだ。

「だから交尾したいの?」

「そんなの虫がやることだ。俺は肌を重ねて、愛を確かめ合う行為がしたいんだ」

ふっとユリは笑った。

「残念だね。じゃあできないよ。私誰も愛せないもん」

「だからさー、愛を育めばいいでしょ? 誰がユリが人を愛せないと決めたの」

「正確には愛の定義がわからないし、強い好きって感情を抱いたこともない、この人のためなら死ねると思ったこともない。人を愛することができないと思わない?」

「本当のことを言おう。愛なんて思い込みと自己洗脳なんだ。愛してるって決めたから愛してる、ただそれだけのことだ。俺を愛してくれ。愛しておくれ」

「やだよ。大樹、チンコ包茎っぽい顔をしてるもん」

「お前、そんなことを言うってことは処女じゃないのか?」大樹はわかっていたが地味にショックを受けた。

「三人ほど」

「へ、へえ……」

大樹の心は泣いていた。

「公園でも行こうか。あなたの失恋に対価を支払うから、大樹は千円出すだけでいいよ」

「バカヤロー、おごられてたまるか!」

伝票を取ると、大樹が全部支払った。会計は二万円を越えていた。

夜の繁華街を歩いて駅とは反対方向の公園へと行く。これからユリと朝までコースなのか、一人で時間潰すだけなのか、大樹の心はエキサイティングだった。

河川敷の下には川がある。ユリは服を脱ぐと、下着姿になって川の中に入っていった。たしかに今年の九月は暑いがユリがそんなことをするとは思っていなかった。思いの外下着が可愛く、そういうことをすることになる想定を一応していたんだな、と思った。

「カーモンベイビー」

歌うようにユリは言う。クレヨンしんちゃんの始まりの音楽だ。

大樹は、自分も全裸になり、「やべ間違えた」と言ってボクサーブリーフだけはくと川に飛び込んだ。

「洋画だとこういうときセックスするんだぜ」

「する?」

「しねえよ。俺は厭世敵な奴とセックスしない。そんなつまらない脱童してどうなる」

ユリは大樹の股間を軽く撫でると、彼を放ってクロールを始めた。

脱毛がほどこされた肢体を見て、スネ毛などがぼうぼうの大樹は恥ずかしくなった。

青春のバカヤローだった。太陽を盗んだ男だった。

大樹は今どきよくいるネットばかりやってる浅い知識ばかり大量に持つ少年だった。

少年よ神話になれ……って男の子は作中でアスカでシコっていて、精神世界で「あんたわたしをオカズにしてんでしょ」と罵られていた。

ユリを追いかける。

彼女はとっくにクロールに飽きて、川の水面に浮かんでいた。

ブラジャーが濡れてエロかった。

映画、愛のむきだし、ばりに大樹は男根を硬くした。

最新型のピストルだった。いや、ただのド新品か。

© 2025 瀧上ルーシー ( 2025年11月24日公開

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