害虫に食べられやすき 無花果の
すり傷の如き赤い果肉
実が割れし柘榴をもげば 風呂場から
弾けんばかり女子の嬌声
大ふさの枇杷ひとつ 手にとって
うぶ毛にわらう遅覚めのひと
鳥が集まる森の中の果物店に
人お断りの茱萸が熟れている
トカゲ来て葡萄をなめて走去ぬ
遠雷の鳴る積乱雲の下
カメレオンならこのお椀のごはんどう食べるだろう?
カメレオンのように固まる
好き嫌い多きカタツムリらしい
ごはん食べにゆくまで 立ったまま眠るウェイター
お椀いっぱいの 純白の喜びを奪うのが
無宿 小バエの日課となりぬ
庭先を夏蝶よこぎる家に 炊き込みごはんの香りしており
約束という言葉なつかし
潮騒に足つけてみる少女の 空に
シロクマ消えて 氷河広がる
日よけ帽の白き縁が地平ゆえに
少女の長いまつ毛がふれる夏枯草
煙突高き風呂屋の汽車は 長屋を連れて走りおり
湯船の少女は校歌
家皆冷蔵ケースの人なき街路にペグマンを立たせて少女は
午睡
イチゴシロップパス ミルクもパス
透明のみぞれ指す少女の 手にアスピリンの青箱
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