第1章:春日大社の異変
奈良の春日大社は、秋の冷たい風が吹き抜ける10月、いつもと異なるざわめきに包まれていた。参拝者がまばらな境内を、鹿たちが異様な熱を帯びた目でうろついている。普段はおとなしく、観光客の鹿せんべいに群がる彼らが、なぜか互いに角を突き合わせ、吠えるような声を上げていた。地元の古老は囁いた。「鹿が発情している。神の怒りだ」と。
この異変の中心にいたのは、佐藤健一(仮名)、日本会議の幹部で、保守派の論客として知られる男だ。彼は春日大社の裏手にある古びた茶屋で、顔を青ざめさせながら座っていた。ズボンの裾には、茶色い汚れがこびりついている。そう、彼は先ほど、参拝中に突然、衆人環視の中で脱糞してしまったのだ。羞恥と混乱に震えながら、彼は茶屋の主人に水を求め、震える手でコップを握った。
「佐藤さん、あんたもか」茶屋の主、老女のキヨが低い声で言った。「この一週間、似たような人が何人も来とる。みな、急に腹を下して、参拝もできずに帰っていく。あんた、なにか悪いことしたんじゃないか?」
佐藤はキヨの目を避け、唇を噛んだ。彼は日本会議の重鎮として、改憲運動や伝統回帰を訴えてきたが、最近、奇妙な夢に悩まされていた。夢の中で、鹿の姿をした神が彼に囁くのだ。「お前は穢れている。統一の血が流れている」と。統一教会との関係は、彼も薄々知っていた。選挙協力、資金の流れ、密かな会合。だが、それは政治の世界では「よくあること」だと自分に言い聞かせてきた。
第2章:奥崎謙三の亡魂
佐藤の脳裏に、奥崎謙三の顔が浮かんだ。奥崎は、戦後日本のタブーに挑んだ男だ。昭和天皇への直訴、戦争責任の追及、そして過激な行動。佐藤は若い頃、奥崎のドキュメンタリーを見て、なぜか心を掴まれた。あの狂気じみた正義感は、佐藤の保守思想とは対極にあるはずなのに、どこか共鳴するものがあった。
ある夜、佐藤は奈良のホテルで奇妙な夢を見た。奥崎が鹿の角を生やし、春日大社の森に立っている。「お前も知ってるだろう、佐藤。日本会議も統一教会も、同じ糞溜めに浸かってる」と、奥崎の声が響く。目が覚めたとき、佐藤の身体は冷や汗でびっしょりだった。そしてまた、腹に激痛が走り、彼はトイレに駆け込んだ。
翌朝、佐藤は奈良の古書店で、きだみのるの『奈良の鹿』を手に取った。きだは、奈良の自然と文化を愛しつつ、その裏に潜む人間の欲望や矛盾を暴いたジャーナリストだ。ページをめくると、奇妙な一節が目に飛び込んできた。「鹿は神の使いだが、人間の穢れを映す鏡でもある。奈良の鹿が乱れるとき、それは人の心の乱れの兆しだ」。
佐藤は背筋が凍った。きだの言葉は、まるで今の自分を指しているようだった。彼は日本会議の活動を通じて、純粋な日本の伝統を守ろうとしてきたつもりだった。だが、統一教会との「協力」は、どこかで彼の心を蝕んでいた。韓国発の宗教団体が、日本の保守運動にどれほど深く根を張っているのか、佐藤は知りすぎていた。
第3章:本多勝一の幻影
佐藤は、奈良の街をさまよいながら、もう一人のジャーナリスト、本多勝一のことを思い出した。本多は、権力や欺瞞に立ち向かい、事実を暴くことに命をかけた男だ。佐藤は若い頃、本多の『中国の旅』を読んで、その鋭い視点に震撼したことがある。だが、今、佐藤は本多の視線を恐れていた。もし本多が生きていたら、佐藤のような男をどう見たか。「偽善者」と一蹴するだろうか。
その夜、佐藤は春日大社の森の奥で、奇妙な光景を目撃した。鹿たちが円になって集まり、その中心に、まるで本多勝一のような男が立っていた。男は佐藤を見つめ、こう言った。「お前は神を語るが、糞にまみれている。統一教会の金、日本の政治、そして奈良の鹿。お前の魂は混血だ」。
佐藤は叫び声を上げて逃げ出したが、足元で何かが崩れる音がした。またしても、彼は失禁していた。恥辱と恐怖に震えながら、彼は森の奥に逃げ込んだ。
第4章:神と糞の混血説
佐藤は森の奥で、統一教会の元信者だという女性、玲子と出会った。彼女はかつて合同結婚式で韓国に渡り、信仰を捨てて日本に帰ってきた。彼女の目は、深い悲しみと怒りに満ちていた。「統一教会は、私たちを神の名の下に搾取した。日本会議も同じよ。あんたたち、純粋な日本のために戦ってるつもりかもしれないけど、結局は同じ穴のムジナよ」と、玲子は吐き捨てるように言った。
彼女は、奈良の鹿の異変について語り始めた。「鹿は神の使いだけど、人の欲望を吸い込む。統一教会も日本会議も、どちらも『神』を掲げて人間を操る。その混血が、鹿を狂わせてるのよ。あんたの身体が穢れているのも、同じ理由だわ」。
佐藤は愕然とした。玲子の言葉は、彼の夢や恐怖を裏付けるものだった。彼は日本会議の活動を通じて、純粋な日本の伝統を守ろうとしてきたはずだった。だが、統一教会との関係は、彼の信念を汚していた。玲子は続けた。「あんたが脱糞したのは、神の呪いじゃない。自分の魂が、自分の嘘を吐き出してるのよ」。
第5章:鹿の覚醒
その夜、佐藤は再び春日大社の森に足を踏み入れた。鹿たちが彼を取り囲み、その目はまるで彼の魂を透視するようだった。佐藤は膝をつき、叫んだ。「私は何を間違えたんだ! 神のために、日本のために戦ってきたはずだ!」
すると、鹿の群れの中から、一頭の巨大な鹿が現れた。その姿は、まるで奥崎謙三、本多勝一、きだみのるの三人が融合したような、異様な威厳を放っていた。鹿は低い声で語り始めた。「お前は神を語り、日本を語るが、己の欲望と欺瞞に溺れている。統一教会も日本会議も、所詮は人間の作った道具だ。真の神は、そんなものに縛られん」。
佐藤は震えながら地面に額を擦りつけた。鹿の言葉は、彼の心の奥底に突き刺さった。彼は、自分が純粋な信念など持っていなかったことを悟った。すべては権力と承認欲求のための戦いだったのだ。
第6章:穢れの清算
翌朝、佐藤は春日大社の神職にすべてを告白した。統一教会との関係、日本会議の裏の動き、そして自分の欺瞞。彼は涙ながらに語り、許しを乞うた。神職は静かに聞き、こう言った。「鹿が発情するのは、人間の穢れが溢れたときだ。お前が清算するなら、まず己と向き合え。そして、鹿に詫びなさい」。
佐藤は森に戻り、鹿たちに向かって頭を下げた。「私の嘘が、君たちを狂わせた。許してくれ」と。彼がそう呟いた瞬間、鹿たちの目は穏やかになり、発情の熱が消えていくようだった。
終章:奈良の静寂
数日後、奈良の街は再び静けさを取り戻した。鹿たちは穏やかに草を食み、観光客に愛嬌を振りまくいつもの姿に戻っていた。佐藤は日本会議を辞め、奈良の小さな寺で暮らし始めた。彼は、きだみのるの言葉を胸に刻んだ。「鹿は鏡だ。人間の心を映す」。彼はもう、権力や神の名を借りた戦いをしないと誓った。
だが、奈良の森の奥では、鹿たちがひそかに囁き合っていた。「人間の穢れは、また繰り返す。次は誰が、糞にまみれるのか」と。
"奈良の鹿はなぜ発情しているのか"へのコメント 0件