小川洋子原作、山村浩二監督のVRアニメーション『耳に棲むもの』(講談社製作)がカナダの「オタワ・アニメーション国際映画祭2023」でVR部門最優秀賞を受賞した。

 オタワ・アニメーション国際映画祭は1976年に始まり、北米最大かつ最古のアニメーション映画祭であり、アヌシー、ザグレブと並び世界三大アニメーション映画祭のひとつ。
 『耳に棲むもの』は、小川洋子がVR作品のために書き下ろしたオリジナル原作をもとに、アカデミー賞ノミネートアニメーション作家で山村監督がVR映画化した作品。2年の歳月を掛けてVRというメディアでしか味わえない作品を完成させた。


毎日土を掘って見つけたものをクッキー缶の中に集める少年が主人公。少年はノートに、彼の人生と、拾い集めた物たちが発する孤独な声たちを記録していた。少年の耳の奥には、4人の音楽隊と、レース状の偕老同穴に住む2匹のエビが住んでいた。彼らは、少年が涙を流すたびに演奏とダンスをして少年を励ましてくれた。彼はお礼に、拾ったものが入ったクッキー缶を振る。やがて少年は補聴器を売るセールスマンになる。ある日TVのニュースで見た、日系人強制収容所で見つかった手製の小鳥のブローチに魅了されて彼は再び声を集める旅に出る。

 山村浩二監督は「この度はVR部門最優秀賞をいただき大変ありがとうございました。この『耳に棲むもの』は、私の初のVR監督作品で、審査員の皆様、映画祭運営の皆様、そして観客の皆様に感謝いたします。オタワ国際アニメーション映画祭には、何度も参加していますが、その都度様々な刺激を受けてきました。今回、残念ながら現地には行けなかったのですが、これまでの思い出とともに、オタワでの受賞を噛み締めています。『耳に棲むもの』は2年の歳月をかけ、原作の小川洋子さんはじめ、多くのスタッフによって形になった作品で、全ての制作スタッフの皆様とこの受賞の喜びを分かち合いたいと思います。ありがとうございました」とコメント。

 公開は未定だが、ひとまず前哨戦として一つ栄誉を勝ち得たことは今後の公開において大きな前進となったに違いない。いち早く作品がより多くの人に届くよう、これからの展開に期待したい。