『戦前不敬発言大全』は特高月報を中心とした資料から不敬発言を集めた資料集。若き日の髙井ホアンが国会図書館や神保町に通い詰めた努力が結実した比類なき書物ともいえる。破滅派ではJuan.Bとして不敬小説の名手として頭角を表しながら、その実、地道な作業を続けて大著を上梓したのである。「闇の混血」の異名は伊達ではない。
本書出版以降、髙井は朝日新聞やFlashなどの大手メディアにも活躍の場を広げてきた。また、世間の注目を集め続けた小室圭さんについての報道も「皇室とはなんだろう」と人々に考えさせ、本書に目を向けさせたことだろう。
版元であるパブリブによると、増刷分ができあがるのは2023年3月1日頃とのこと。
【速報】突然ですが『戦前不敬発言大全』を重版します! https://t.co/KTWtJFhIo1 pic.twitter.com/VciHXMgTM0
— パブリブ (@publibjp) February 1, 2023
「ドシ天」というのは、本書で引用されている「実力のある者をドシドシ天皇にすべきだ」という投書から生まれた言葉。本書には他にも「お、そうだな」と思わせる力強いフレーズが散りばめらている。髙井によるコラムも充実しており、「大正天皇はバカか」「宮中某重大事件」などの皇室にまつわるエピソードも強烈だ。ヒロヒトを大胆に据えた表紙もキャッチーである。
そもそもこうした不敬について取り扱った書物の出版は、右傾化の進む日本においてある種の挑戦となる。そんな書物が出版され、増刷されるのだから、我が国もまだまだ捨てたものではないのではないか。
本書とあわせて上梓された『戦前反戦発言大全』も、昨今の不安な国際情勢に応じて新たな読者を獲得し、めでたくアベック増刷となる未来も遠くないかもしれない。
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