滝口悠生の「水平線」(新潮社)が12月21日、『第39回織田作之助賞』を受賞した。

織田作之助賞は実行委員会(大阪市、大阪文学振興会、関西大学、パソナグループ、毎日新聞社)主催、一心寺協賛で1983年に創設。新鋭・気鋭の作家の小説(単行本)を対象に毎年選考されている。

太平洋戦争末期に激戦地となった硫黄島をめぐる物語。島民の子孫にあたる兄妹を軸に、現代を生きる2人と、島で命を奪われた者や本土に疎開した者たちとの声が時空を超えて響き合う。

選考会は大阪市北区の毎日新聞大阪本社で開かれた。選考委員の作家・高村薫は「作者や登場人物の意識が揺らぎ、夢とうつつが重なり合って、70年前の死者と語り合うような世界が生まれた。作者独特の緩さの中で、戦争も現代の感覚で捉えられている」と評した。

滝口は2011年、「楽器」で新潮新人賞を受賞しデビュー。16年に「死んでいない者」で芥川賞を受賞した。母方の祖父母が硫黄島出身で、「水平線」のような作品をいつか書こうと考えていたという。Twitterでも受賞を喜んだ。

贈呈式は来年3月、大阪市内で開催される予定。