『シン・サークルクラッシャー麻紀』は京都大学の文芸サークル「ともしび」を舞台に麻紀がサークルクラッシュするところから物語が始まる。「暗黒の花束みたいな恋をした」と密かに呼ばれる本書では、先行作品への言及が随所に見られる。ジャンルごとに分類して関連作品を紹介していこう。
文学作品
主要登場人物の多くは文学に詳しく、また主人公である部長も文学に詳しい。
まずは冒頭のエピグラフはポール・ヴァレリー『テスト氏 未完の物語』から。ヴァレリーが生涯描き続けた架空の人物「テスト氏」に関する連作短編集。
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創作と哲学に関する深い引用句から爆笑ものの書き出しに繋がる流れを堪能してほしい。岩波文庫『ムッシュー・テスト』が入手しやすい。
「永遠の恋愛小説」である村上春樹の『ノルウェイの森』は作中作「受賞第一作」の書き出しに採用されている。
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春樹が語り手にビートルズを聞かせて涙させる一方、佐川は窓際の席を取れなかった語り手に惨めな思い出を思い起こさせる。
大江健三郎『小説の経験』に収録された「元気の出る『罪と罰』」が収録されている。このエセーと対比されるのが後で紹介する『革命のファンファーレ』である。なぜその二つか? それは『シン・サークルクラッシャー麻紀』を読んでのお楽しみである。
トーマス・マン「トーニオ・クレーガー」は麻希の「言葉で説明できることなんて、本当のことじゃない」という感情を裏付けるために挙げられる。それを受けて部長がどう答えるのか、クライマックス近くの重要なシーンである。
磯崎憲一郎『鳥獣戯画』はモテる男の小説として登場する。30年近く会社を勤め上げたあと小説家になった「私」は女優と一緒に京都へ向かう。「武者小路実篤側」の人間である部長は、そういう風にはなれない。
アンドレ・ブルトン『ナジャ』は麻紀と深く関わる重要な作品。『シン・サークルクラッシャー麻紀』を読み終えた方は、ナジャがどんな女性だったか気になることだろう。
作中作「受賞第一作」の中で風俗に行こうと決心した語り手は唐突にヘルマン・ヘッセ『シッダールタ』の文体をパロディする。
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私はもはや煩悩から解き放たれたブッダだった、ゴーヴィンダよ、指名とは何か、それは人間を選別することだ、偶然の導きを捨てることだ、それは気付きをもたらさない、ぼくたちのうんざりしている現実世界にひび割れひとつ入れることができない、おお、ゴーヴィンダよ、わが最上の友よ、ぼくたちはフリーで入ろうではないか!
「ゴーヴィンダってなんだろう?」と気になった方はぜひ『シッダールタ』を読んでみてほしい。『シン・サークルクラッシャー麻紀』ではいっさい説明がなかったゴーヴィンダがわかるはずだ。
アンドレ・ジィド『贋金つかい』は『シン・サークルクラッシャー麻紀』と同様、作中作が登場する入れ子構造の作品である。
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クライマックスシーンで新幹線の中、『贋金つかい』を読む部長の胸にともる火は涙なしには読めない。ここらへんから多くの読者は「まさかサークルクラッシャーの話で胸に迫るものがあるとは思わなかった」と感じるはずだ。
ビジネス書・ノンフィクション
ビジネス書は部長の運命を大きく変える重要な書籍である。
大学卒業後の部長を支えた自己啓発本『革命のファンファーレ』は前述した通り、大江健三郎「元気が出る『罪と罰』」と対比して語られる。
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いま正直なところを言えば、ドストエフスキーは西野亮廣に負けていた。
「部長の文学、どうなっちゃうの〜」という緊迫した展開である。
以下、作中には登場しないが、普段ビジネス書をまったく読まない佐川恭一が作品のために情報源として参考にした書籍である。
また、麻紀の語る「AV女優論」の参考のために、鈴木涼美『AV女優の社会学』を参考にしたそうである。
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映像作品
本作ではいくつかの映像作品も言及されている。
西野亮廣による絵本『えんとつ町のプペル』を原作にした映画は本作で非常に重要なキーとなる作品である。京都大学の文芸サークルからはもっとも遠い位置にありそうなこの作品がどのような役割を果たすのか、本作を読んでみてほしい。
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作中作「受賞第一作」の中で風俗のパネルマジックにより失意の中にいた語り手は、突如「われわれは何処から来たのか、われわれは何者か、われわれは何処へ行くのか」と思い立ち、ゴーギャンの伝記映画を見に行く。ゴーギャンは『シン・サークルクラッシャー麻紀』を読み解く上で重要な画家である。作品もわりと最近なので、ぜひフランス語日本語字幕で見てほしい。
価格¥400
順位75,570位
監督エドゥアルド・デルック
プロデュースブリュノ・レヴィ
Writerエドゥアルド・デルック, エチエンヌ・コマール, トマ・リルティ, ほか
出演ヴァンサン・カッセル, ツイー・アダムス, マリック・ジティ, ほか
発売日2018 年 8 月 2 日
その他、入手できるかわからないのだが、いくつかのアダルト作品も参考作品として紹介してもらった。作中作「受賞第一作」の語り手はことあるごとにAVを見ており、人生の重要な局面のかなりの部分にAV鑑賞が関わってきている。とりわけ、語り手が鑑賞順に異様にこだわるシリーズ「僕と不倫ドライブしませんか?」の元ネタとして2作品を紹介する。
- 『熱ドライブ』シリーズ(01〜07)プレステージ
- 『ポルチオアクメ 完全保存版総集編』ベイビーエンターテイメント
そして、同じく「受賞第一作」内で語り手がこだわるのが「超絶パチバトル女流編」のクソワロリーヌ吉川VS池澤メッテルニヒの対決。優勝賞金で奥歯を治そうと決意するクソワロリーヌ吉川の熱意に語り手が共感を高めていく場面で人生を一変するはずの電話がかかってくる、というシークエンスだ。このパチバトルの参考になっているのが「パチンコ必勝ガイド」の「女子ライター勝ち抜き女王決定戦」である。
実際のライター対決と比べて、クソワロリーヌ吉川が果たして戯画化された存在なのか、リアリティ溢れる女性パチンカーなのか、ぜひ見届けてもらいたい。
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以上、『シン・サークルクラッシャー麻紀』の関連作品を紹介した。文学に関する思いが溢れた本作から、読者が新しい作品に出会うことができれば、版元として望外の幸せである。また、もし佐川恭一フェアを行いたいという書店があれば、ぜひこれらの作品をあわせて並べていただければ、興味深い棚が作れるのではないだろうか。
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