衣笠太郎『旧ドイツ領全史』が8月上旬にパブリブより出版されることが分かった。

昨年5月に髙井ホアン著『戦前反戦発言大全』『戦前不敬発言大全』を刊行するなどしているパブリブから、今度は歴史の中で分かれていった「ドイツ領」の全貌を探る大著『旧ドイツ領全史』が出版される。

1871年に成立したドイツは、直前の普仏戦争で得たエルザス=ロートリンゲン(仏名アルザス=ロレーヌ)から、現在のポーランドと東欧に至るまでの広大な領土を持ち、また中世から文化的に様々な影響を与え、また受けてきた。二度に渡る世界大戦により、数度に分けて領土は縮小していったが、現在もドイツと近隣諸国に、それぞれ様々な痕跡や多岐にわたる影響を残している。

■オストプロイセン 歴代君主の戴冠地ケーニヒスベルクを擁すプロイセンの中核
■ヴェストプロイセン ポーランド分割後にプロイセンと一体化させられた係争地
■シュレージエン ピァスト朝・ハプスブルクを経て、工業化を果たした言語境界地域
■ポーゼン プロイセンによって「ドイツ化」の対象となった「ポーランド揺籃の地」
■ヒンターポンメルン スウェーデン支配を経て保守派の牙城となったバルト海の要衝
■北シュレースヴィヒ 普墺戦争からドイツ統一、デンマーク国民国家への足掛かり
■エルザス=ロートリンゲン 独仏対立の舞台から和解の象徴、欧州連合の中心地に
■オイペン・マルメディ周辺地域 ベルギーの中のドイツ語共同体と、線路で分断された飛び地

『旧ドイツ領全史』では1871年のドイツ帝国成立時の領土を基準に、それら第一次世界大戦と第二次世界大戦などにより分割された領土に着目し、当地の文化や旧ドイツ領時代の出身者なども説明しつつ「そこはなぜドイツになり、なぜドイツではなくなったのか?」を探っていく著書となっている。豊富な写真・地図資料も掲載されており、旅行ガイド的な使い方も出来る。著者はシュレージエン研究者で知られる秀明大学助教の衣笠太朗であり、地図資料も多くが自身の手によっており、それ自体が改めて貴重な記録となる。ぜひ手に入れておきたい一冊と言えるだろう。

もちろん『旧ドイツ領全史』だけでも大変注目される書籍だが、パブリブからは以前にも伸井太一編著・齋藤正樹著『第二帝国』シリーズや栗原久定『ドイツ植民地研究』といった、近代ドイツを改めて俯瞰する書籍が出されている。これらと合わせて読むことで相互に近代ドイツの姿を豊富な資料とともに読み解けるだろう。

『旧ドイツ領全史』は8月3日頃より出荷予定であり、8月中旬までに全国書店、Amazonなど各種通販サイトに並ぶと思われる。詳しい情報は下記リンクを参照のこと。