・ゆきゆきて新検見川
11月26日。文学フリマ東京もNovelJamも前日に終わったその日、私は東京某所で藤城孝輔氏と待ち合わせていた。2017年度合評会優勝の賞品として、またNovelJamに挑んだ一参加者としてのインタビューを行うためである。この日は一希零氏も一緒だった。あと、ついでに合評会のお題も今日決めるんだ。
一昨日にも出会っている藤城氏を見付けるのは容易だった。数十回目の握手を交わし、私と一希氏そして藤城氏の三人で総武線に乗り込む。今回のインタビュー開催地は、千葉県の新検見川近辺にある高橋文樹氏別邸である。高橋氏の厚意により、藤城氏はここに宿泊する予定になっていた。
新検見川までの車中、様々な話が交わされた。特にNovelJamについては気になる所だったが、それはインタビュー本番に回さなければいけない。市川を通った際、藤城氏は小奇麗なマンションや小規模モールが並ぶこの湾岸的人工風景についてどう思うか私に聞いてきたので、私は「どこからか奇妙な煤煙がやってきて全部を巻き込みくすんだ退廃的な風景になってしまえば良い」と答えた所、藤城氏は笑ってくれた。素晴らしい事だ。
新検見川で降り、しばらくすると、高橋氏が出迎えに来てくれた。そして案内されたのは、古いアパートであった。かつて山谷感人先生来京の際にも宿泊したあのアパートである。私は今まで山谷先生の宿泊を通じた描写でしか知らなかったが、こんな場所だったのかと言う印象だった。人によって様々な印象な様で、ある人はアレな描写したり後で凄いことを言い出す人も現れたが、ここでは触れないでおく。私からすれば外見に比して中は綺麗だった。
ただし、先客がいる。ドアを開ける前からその存在感がビンビン主張されている。高橋氏から、初対面の人はお菓子をあげる様にと言われた。ここにいるのは誰だ。やはりルイ14世の片割れの鉄仮面か。高橋氏は仏文科出だしな。
高橋氏の飼い犬、パッキン(雌)だった。初対面の人には少し吠えるが、お菓子を貰うとすぐなつく。俺の足を嗅ぐな!
この時、犬を少し撫でた後、持ってきた軽食を食べる為に手を洗ったら、潔癖症と勘違いされた。でもトイレトイレと興奮したりあとでとんでもないことを言い出す藤城さんの方も大概じゃないかナ……。
高橋文樹氏の書斎を拝見させてもらう。岩波文庫やちくま文庫の揃いっぷりは書店のようだ。藤城氏もとても興味を惹かれている。
高橋氏が旅行先で手に入れた土産。異様な目力のある画だ。
記念撮影をするため、庭の芝生に案内された。藤城さんはパソコンである物を表示する。
そうそう、これを忘れてはならない。NovelJam・チームゴメラで藤城さんが執筆した小説「川の先へ雲は流れ」である。是非皆さんも購入して応援して頂きたい。
さて、そろそろインタビューを始めなければならない。だが、ここからがまた大変だった。録音をスマホで行うまで数分、音声文字起しが使えるんじゃないかで数分、出来なくてじゃあまた録音、あでもテストしなきゃで数分……。すみません。
高橋氏が隣の部屋でご飯を食べたり仕事をしたりする中、私と一希氏は藤城氏に向かい合い、インタビューをいよいよ始めるのであった。
・インタビュー本編
(インタビューはJuan.Bが主導し、一希さんの補助を受けつつ行われた。適宜編集を行っている。)
藤城さん、今日はよろしくお願いします。
よろしくお願いします。
前年の合評会優勝、おめでとうございます。
ありがとうございます。もう遠い昔の事ですが……。(笑) ※1
ちょっとあれ以来時間たっちゃってるんで(笑)、合評会の賞品としてのインタビューの価値が薄まっちゃってるかも知れませんが、藤城さんの現在とノベルジャムの宣伝とを兼ねてインタビューさせて頂こうと思います。
はい。
・藤城さんの文学的来歴
まず、藤城さんの紹介として、破滅派に来るまでの来歴を聞かせてください。
書く方ですか? ※2
書く方です。
そうですね、高校生の頃に文芸部にいたんですが、その時はあまり書いておらず、ネットで書き始めたのは2015年ですね。時空モノガタリというサイトで2000文字までの掌編を書いていました。
私は登録してないので詳しくないんですが、そのサイトでかなり賞を取っている様に見たんですが。
いえ、あれでも少ないです。5、60本書いて幾つか賞とって5000円貰えると言う。
破滅派の合評会より……。
少ない……。(笑)いやこれじゃ金目当てですね(笑)
そんなことは無いですよ(笑)。2015年でも破滅派に来る前年ですね。 (藤城さんの登録は2016年)
そうです、それで2016年に破滅派の合評会の宣伝を見つけて、そこに参加することにしました。
その合評会は第一回ですね。最初から合評会の常連と言うことで……。 ※3
第一回から嫌なコメントを続けています。(笑)
他のサイト含めて、他人に評価されるという合評会形式で参加したのはそれが初めてですか?
そうですね。そして他人を評価するという……。
やはり破滅派は良いですか?
ええ、破滅派は普通の小説投稿サイトと違って反応があるじゃないですか。特に合評会だと、自分の書いたものに必ずコメントが付く。他のサイトだと、人気作家じゃない限り、載せたっきりじゃないですか。
破滅派の合評会のお題はちょっと変なものも多いですがそこはどうですか?
そうですね、お題が変ですからね。初回からして、「去年まで女子高だった学校にに男子が一人で入る」ですから。その次は「スポーツエリートがグレて競技から離れていたところを昔の恩師に誘われる」ですし。 ※4
(暫しサイトを見て2017年以前のお題を振り返る。)
(一希)最初の頃の破滅派合評会ってやはりお題がかなりハードですね。
そうですね、「妖精が原発作業員として紛れ込む」とか「人間が家畜と入れ替わる」、「パリでテロがあった」……(笑)。
藤城さん、合評会の皆勤じゃないですか。
私、皆勤だからチャンピオン貰えたんですよ。決して点数が高いから貰えたわけじゃありません。
いやいや(笑)。藤城さんの過去参加作品の中で一番気に入ってる作品は何ですか?
全部お気に入りですが……ああ、一番気に入ってるのは、「妖精が原発作業員として紛れ込んでいる」の回で書いた「鉄腕アトムへの手紙 」ですね。ひねりとかは入れず、そのまんまお題を話にしました。妖精が国を滅ぼされて原発作業員になったけど、そこにもいろんな人がいて、最終的に作業員に不満を抱いているおばちゃん自警団に殴り殺されるという。
・作品集「フィフティ・イージー・ピーセス」について
藤城さんがこの夏出された作品集「フィフティ・イージー・ピーセス」についてお話を伺いたいんですが。
はい。
あれは2000~3000文字、それぐらいの作品を集められた短編集……。
原稿用紙5枚程度の作品を50本。
所謂「掌の小説」ですか。
そんな感じです。時空モノガタリに投稿していた作品がそのサイズで、書き溜めたものにちょっと足して手直ししてという感じで。
総集編プラス修正、みたいな。結構評判が良いですね。アマゾンでもレビューが書かれてますね。
全部お気に入りの作品なので、是非読んでください。
・藤城さんにとっての「紙の破滅派」
藤城さんにとって破滅派という場は、合評会に参加するのと、作品を発表するのと……。
ここで人々、同人と交流すること。 ※5
そう、あと「紙の破滅派」もありましたね。藤城さんが紙の破滅派に参加されたのは11号の縄文特集からですね。
そうですね。
藤城さんはそこで縄文人と貝塚人の微妙な差の対立を描いてましたね。あれは何かご自身の経験か何かがモチーフですか?
いえ、自分の事ではないですね。沖縄の貝塚文化と本土の縄文文化について取り上げました。過去と現在との場面を半分ずつ。
(Juan.B、紙の破滅派を持ってこず記憶のまま話す痛恨のミス。しかし藤城氏は怒らない……。高橋氏が書斎から紙の破滅派の在庫を持ってきてくれた)
すみません(笑) 「縄文人VS貝塚人」から始まったと。その次に別冊の「再会」が出て。
人魚の話を書きました。
それで、次は12号「感染」。
エセーを書きました。
(高橋)表紙が誤字ってる奴ですね。 (表紙の「10周年」が「10週年」となっている)
何か詰めが甘いなって感じですね(笑)
13号は春に出たBTTBですね。好きな文豪とか誰かの処女作をアレンジする企画。
私、没になりました(笑) ※6
私もです(笑) いや没じゃなくて裏BTTBですよ。ネット限定! 表は大猫さんとか牧野さんとか新しく来た人優先でやりましたね。
とても質が高かった。私は文樹さんの処女作「途中下車」をリメイクしました。
「途中下車」の原作は、お兄さんから妹への、その、密接な、愛を、描いてますね。※7
私のリメイクは違いますけどね。私はもっと健全です。(笑) 同じ破滅派の一員として敬意をもって書きました。
ところで藤城さんは紙でも掌編が多いですね。
ええ。長いのはあまり書けないので……。
でも今回の紙の破滅派14号は長めに書いています。
長い物を書かなかったわけではないので、まあ挑戦しました。このサイズでは3作目です。
今回は「元号」で、藤城さんは「平成と情熱のあいだ」を書かれましたね。
元号が変わった事で永遠に来なくなってしまった約束の日、そんなお話です。 ※7同
悲しい……。
エモいでしょ。(笑)
インタビューなのに私の意見言ってしまいますけど、平成は単なる31年間だと思ってて、そう考えると意味無いんだけど、約束が掛かった瞬間意味を持って……。
その意味を持つのは、日本人だけ。(Juan.Bも復唱) やはり日本という枠組みの中での約束事みたいなものでしょうね。
この話には韓国人の方が出てきますね。そう言えば前の合評会(パリでテロがあった)でも韓国人が出ていた。何か関りが?
いえ、特には。留学先でちょっと関わったくらいです。でも今、韓国語を勉強しています。
沖縄や3.11地震など政治的な話題も盛り込まれてますね。藤城さんは3.11の時どちらにおられましたか?
パリです。最初は何にも知らなくて、周囲の人から「あなたの国、大変ね」って言われて気付きました。
先程の「平成の認識」に被りますが、3.11という区切り、それ以前または以後という時間に何か意味を見出していますか?
被災した人々にとっては当然大きな意味があると思っています。
そうでしょうね。
ただナショナルな枠組みの中でこれに特別な意味付けをしようとしている人々もいると思います。被災者に共感していなくても。
・一希さんからの質問
(ここで一希さんからの質問ないしインタビューが加わった。私よりも遥かに聞き上手だった……。)
(以下、しばらく質問は一希)私から良いですか?
ええ、どうぞ。
今の話を聞いてて、藤城さんはこう、時事的な話題とか社会問題をこう、話に必ず含んでいるんだけど、一方それらをやや突き放した感じで小説を書いているように感じるんですね。そこで合評会の講評で色々話が膨らむことも……。
そうですね、大猫さんと二度ばかり論争みたいなこともしてますね。仲は良いんですけどね(笑) 意見の違いを、戦わせられるのも破滅派の魅力だと思ってます。違った意見、書き方があって良いと思います。こう言い合えるのも充実ですね。
現実の問題と自分の書く小説とにおいて、何か考えていることとか、こだわりとかってあるんでしょうか。
別に私自身は政治に対して強い意見を持ってる訳ではないんですね。それに社会に対して何かを言ってやろうと言う訳でもないんです。ただ、これを取り上げると同時代の人に伝わりやすくなる、という読者の目線を意識して取り上げるようにしています。
小説世界と現実世界を繋げるとか、読者に自分の事として小説を感じて貰える回路として、そういう物を使っていると。
そうですね。
・映画と藤城さん
(Juan.Bに戻る)Twitterでの藤城さんや、neoneoの映画評論大賞を取ったイメージから、藤城さんは映画評論をやっているイメージがあるんですが、そちらは……。
大学院を去年出て、今は雑誌などに映画の評論を寄稿するなど細々とやっています。
映画には、見る側として思い入れがあるんですか。
映画は結構見てます。
藤城さんが今までで一番影響を受けた映画ってありますか?
ウディ・アレン監督の「アニー・ホール」(Annie Hall)です。
ウディ・アレン監督による1977年作品。アカデミー賞5部門受賞。
ウディ・アレンって、ユダヤ系のコメディアンの方でしたかね。
そうですね。
「アニー・ホール」のどんな所に惹かれたんですか?
内容はラブストーリーなんですけど、魅力を感じたのは、色んな要素がごちゃ混ぜにされてる所です。白雪姫のアニメのシーンが入ったり解説が突然入ったり、目まぐるしく変わるのが良いですね。
それは大学の授業か何かで見られたんですか。
いえ、中学生の時に、TSUTAYAでVHSを借りて。
VHS世代ですね(笑)
はい。(笑)
(一希)映画の評論をやってるとか、今好きな映画の話もされましたけど、映画は藤城さんの書く小説に影響を与えてますか?
自分ではちょっと良く分かりませんね。ただ書くきっかけにはなりました。最初に書いた時はちょうど博論をやっていた時期だったので、博論に行き詰まって、自分でも日本語でなんかやってみたい感じになって、創作に逃げたと言うか走った感じになって。
映画を作る方には加わった事は無いんですか?
字幕を付けたりとか、現場で通訳をするとか、そういう小さい仕事はしてます。でもそれは翻訳者としての仕事なので。
・藤城さんと小説の影響
(以下しばらく一希)普段は英語の小説を読んだりしますか?
読みますね。
好きな小説や文学者でよく読んでる物は?
トルーマン・カポーティですね。文章が見事なんです。短編小説「夜の樹」とか、あと中編小説なんですけど自伝的要素のある「草の竪琴」とか。彼の小説には無垢なものに対する憧憬が描かれています。
トルーマン・ガルシア・カポーティ(Truman Garcia Capote, 1924年9月30日 – 1984年8月25日)
藤城さんの作品って合評会のコメントを見てても、筆力とか構成力とか描写が素晴らしいというコメントが毎回ついてますね。そういう点で何か参考にしている小説とかありますか?
真似とかはしないけど、引用は結構しますね。今回(NovelJam作品『川の先へ雲は流れ』のこと)も子連れ狼が出てきますけど、毎回何か引用して言及したりします。読み手の人が持つ知識に訴えかけようと言うのはあります。誰も知らない人のオマージュを言ったって面白くないですから。
では藤城さんの文章って特に何かを意識した文体では無くて、藤城さん自身が素直に書かれた文章……。
素直じゃないですよ(笑) でも文章が綺麗なだけじゃダメですね。やっぱり長編を書くにはストーリーテリングの力とか勉強しなければと、まだまだ思います。
NovelJam参加もそれに関わってますか。
そうですけど、NovelJamはまだ短編じゃないですか。私は長編が書けないので。
原稿用紙100枚とか200枚とか。
私はそんな分量書いた事ないので、一度そういう物を書いてみたいなと思ってるんですけど、中々決心がつきませんね。
それが出来たら、破滅派から電子書籍にして出すとか、あるいは新人賞に出すとかそういう目標はありますか。
まずは少しでも長く書く、書けるようになる、ですね。その努力を続けたいと思っています。
(Juan.Bに戻る)藤城さんは毎回合評会では分析的なコメントを誰に対しても書いてくれて、やはりコメントにかける時間は長いですか?
夜中に一生懸命読んで書いてます。
去年の4月の合評会(酒と不倫)に来られた時、各作品を印刷したものに分析やコメントを書かれてましたね。ああいう感じで毎回書いていると。 ※8
そうですね、毎回あんな感じで、どんなケチを付けてやろうかって、一生懸命やってますね(笑)
それは大学の授業とかあるいは評論の中で学んだ方法ですか。
多分、人に文句を付けるのが好きなんですかね(笑)
・来京、そしてNovelJam
藤城さんは、今は沖縄に住まれてると言うことで、これからもしばらくは沖縄にいるんですか?
そうですね、大学の職に就けたら良いんですが、沖縄にいると映画学科の仕事が無いんですよ。だけど仕事がないと別の所に行けない訳ですね。そのジレンマがあります。
沖縄で映画の仕事を作り出したいですか。
いえ、場所は特に関係ないですね。大学の映画学科の職があればどこにでも行きますよ。
今回の来京は、NovelJamへの参加と、それと劇「豊饒の海」の鑑賞をするために来られたんですね。
そうです、その劇は演出や方法に気になる所があるので楽しみにしてます。
三島由紀夫の「豊饒の海」だとストーリーはもう分ってるので、それをどう表現するかが気になりますね。
はい。違うメディアで表現するとか、小説の映画化とか、映画のリメイクとか色々あるじゃないですか。違う角度で同じ話を料理するのは関心がありますね。
ではこれからNovelJamの話についてお伺いしようと思います。NovelJamの主要な三日間を終えられて、何か一参加者としての説明や感想をお聞かせ頂ければ。
NovelJamは、2泊3日で合宿して、一本一万字の小説を書こうと言う無茶な企画で(笑)、私は参加したチームメンバーにも恵まれて、喧嘩も無く和気あいあいとしながら他の人のアイデアを取り入れて、デザイナーや編集の人の意見を取り入れたり直したりして共同作業をして小説「川の先へ雲は流れ」を作りました。凄く楽しく書けたので小説には満足しています。賞は取れませんでしたが。 ※9
午前8時に提出してから、夜に審査員賞が発表されるまでの間は何をされてたんですか? アピールタイムでしたか?
プレゼンがあります。でも私(著者)はやりません。編集の波野さんがやりました。
波野さんは今回価格にこだわりがあったみたいですね。
そう。プレゼンもそうですが、電子書籍の販売も3日目にやります。波野さんは戦略として1080円に設定しました。このNoveJamの作品だけじゃなくて過去の作品、それとニシカワリキさんに書いて貰った評論もいれて、1080円で販売しました。
短編集になってるんですね。
そうですね、中身は充実してます。
2ヶ月間の販売を経て、藤井太洋賞とグランプリ賞がまだ残ってますね。
グランプリは売り上げやマーケティングの努力を総合的に見て評価するとのことです。自分なりに頑張ります。
是非取れるように願っています。では最後に、何か締めの言葉があればお願いします!
はい、今NovelJamで書いた小説「川の先へ雲は流れ」がBCCKSで販売中です。是非買ってください。お願いします。
ありがとうございました。
※1 藤城さんの2017年度合評会優勝が決まったのは2018年2月。約9ヶ月を経てインタビューの約束を果たすこととなった。
※2 以後、Juan.Bのスキルと準備不足による、質問のやり取りにおける困惑が相次ぐことになる。藤城さんすんません。
※3 現在、初期から合評会にほぼ欠かさず投稿しているのは藤城氏、Juan.B、工藤はじめ、瀧上ルーシー、次いで主催者の高橋文樹であろう。
※4 しかしこの後、これと並ぶ壮絶なお題を藤城氏は繰り出すことになる。
※5 藤城氏は沖縄に住んでいるが、毎月の編集会議にはネットを介しほぼ毎回参加している。
※6 没とは言うが、実際は裏BTTBとして作品集になっている。紙ではなくデータの破滅派だ。
※7 みんなも買って読んで確かめてみよう。
※8 全ての作品に赤字で分析が行われていた。
※9 Juan.Bの観戦記なども参照されたい。
・最後の一波乱
インタビューを終え、私達は一息ついた。それにしても、録音を聞いていると、自分の声と言うのは何と酷い物だろう……。
高橋氏の部屋の惨状に驚愕した藤城氏は、高橋別邸ではなく、電車で東京方面に数駅戻った場所のホテルに一泊することになった。高橋氏及びパッキンと別れ、私達は新検見川駅前へ戻った。そこで、藤城氏が夕食に誘ってくれたため、一希氏とともに御厚意に甘えることにした。早速すぐそこにあった「餃子の王将」に入る。
私はチャーハン定食を、一希氏と藤城氏はラーメン定食を頼んだ。ここでも、私や一希氏の話などを主に藤城氏と様々な会話が行われたが、その内一番の問題がここで露呈した。次回の合評会のお題を決めないと……。次回のお題は藤城氏とJuan.Bで協議して決める事になっていたのだが……。頼れる藤城氏が爽やかな笑顔で発案してくれた。
「次回のお題、『犬小屋』とかどうですか」
「犬小屋って、あの」
「それさっきの部屋」
私は引きつった笑いで、ああーはあーと曖昧な声しか出なかった。一希さんは微妙にノッている。犬小屋……これは明らかに、アレか……hmm……。あのワンちゃん可愛かったなあ。俺は何のために生きてるんだろうか。
藤城氏は如何なる責任を捨てても関東から逃げられる。俺は逃げられない。地理的距離の差による余裕に俺は負けた。人間は皆バベルの塔に群がっていれば幸せだったのだ。元はと言えばアダムとイブのせいだ。嗚呼神様! でもまあーたまにはこう言うのも良いか。そんな訳で、藤城さんの主導と言うことで次回の合評会のお題は「犬小屋のような部屋に本がたくさんある」に決まりました。破滅派各自がんばろう。
その後、藤城氏とともに電車に乗った。数駅の間も、会話がやむ事は無い。またいつかの再会とNovelJamの成功を願いつつ、藤城氏と別れた。さようなら、また会う日まで。「犬小屋」はいつでも藤城氏を待っているだろう。
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