今月は新潮、文學界、群像、すばるの4誌が発売された。4誌の概観をここで紹介しよう。さらに、破滅派フリークには必読情報もあるので確認されたい。

新潮 2022年12月号

・創作では、佐藤厚志による「荒地の家族」、石井遊佳による「水妖生死奇譚」が掲載。

・【追悼】「ゴダールと私」として、金井美恵子「緑色の部屋」、保坂和志「私とゴダール」、柴崎友香「イメージと言葉」、中原昌也「何も思い浮かばない」、矢作俊彦「鳴り止まない 頭の中で音楽が あの日から」という豪華執筆陣がゴダールの追悼文を寄せる。

・個人的に注目したいのは、先日、ロックバンドを題材とした長篇『音楽が鳴りやんだら』を上梓した高橋弘希による「トム・ヨークについて」。世界中からリスペクトを集める英のモンスターバンド、レディオヘッドのフロントマンであるトム・ヨークについて、彼は何を語るのか。

文學界 2022年12月号

・【特集】未来のドキュメンタリーとして、ドキュメンタリーの映像作家について特集。大島新へのインタビュー「観る者の景色を変える――私のドキュメンタリー作法」や、小田香×草野なつか×小森はるかによる座談会「何者でもないものが、そこに立ちあがる」などドキュメンタリーに関するものを掲載。

・創作では、上田岳弘「K+k」、島口大樹「光の痕」、奥野紗世子「オーシャンビューの街のやつ」が掲載。そして、破滅派に限らず、惑星と口笛やVG+ (バゴプラ)など様々な媒体でも活躍中の大木芙沙子による「ふくらはぎ」が二〇二二年下半期同人雑誌優秀作として掲載される。今作は前回の東京文フリで閑窓社より頒布された文芸同人誌『閑窓Vol.5 道辻を灯す』に掲載された短編。

・鳥飼茜×岸政彦による対談「物語を駆動させる風景」では何が語られるのか。

群像 2022年12月号

・青野暦による中篇「雲をなぞる」を一挙掲載。

・創作では、金原ひとみ「フェスティヴィタDEATHシ」、川上弘美「袋いっぱいに黒い種が」、町田康「仁徳天皇」が掲載。

・【特集】「小さな恋」として、小さな恋のものがたりを描き続けている漫画家、みつはしちかこ「小さな恋の60年」が掲載。ほか高瀬隼子「お返し」、井戸川射子「かわいそうに、濡れて」、水上文「あなたが生きられる物語――恋/愛を問い直す」も。

・保阪正康「Nの廻廊」が最終回を迎える。

・【小特集】「ソルニット、ふたたび」として、翻訳者たちが語り、なぞり、ひらいて描く、思想家、社会活動家、フェミニストのレベッカ・ソルニットの肖像。川端康雄×ハーン小路恭子による対談「自然と政治、蛇行する思考――オーウェルとソルニット」、東辻賢治郎「砂漠のノーテーション」、渡辺由佳里「レベッカ・ソルニットの捉え方で露呈するのは読者自身かもしれない」を掲載。

すばる 2022年12月号

・創作では、井上荒野「墓」、椎名誠「遭難船」が掲載。小説短期集中掲載として、岩城けい「Ms エムズ(1)」も。

・李琴峰によるロングエッセイ「歌舞伎町の夜に抱かれて」が掲載。

・古川日出男による講演「『現代』が文学的ターニング・ポイントとなるための要件」を掲載。

・今年ノーベル文学賞を受賞した仏作家アニー・エルノーに迫る。堀茂樹『アニー・エルノーに関する三つの「誤解」』、関口涼子「枠をはみ出す『偉大な作家』」、横田悠矢「白い文体、「私」の時間」を一挙掲載。

以上、2022年11月発売の4誌について、概観を紹介した。読書の一助になれば幸いである。