破滅派では現在、様々な人が参加すると同時に、盛んに破滅派と言う枠を超えて活動する同人も多い。2019年も半分を過ぎたが、破滅派同人の活躍著しい時期となっている。ここでは、2019年前半における破滅派同人の活躍の様子をまとめてご紹介する。
1月
・チームゴメラの活躍
昨年11月に開催されたNovelJam2018秋において、破滅派同人である編集者枠・波野發作と作家枠・藤城孝輔は同チームとなり、そこに小説家のニシカワリキ氏とデザイナーのほさかなお氏を加えて「チームゴメラ」が結成された。NovelJamの本開催が終わった後も、2019年2月のグランプリ、そしてその後まで見越してチームの結束は続いている。波野はグランプリに向けて様々な作品展開・メディアミックスを行っており、グッズ販売もその一環となった。
2月
・NovelJamグランプリ発表 藤城孝輔が藤井賞受賞
そして、2月1日のNovelJamグランプリが開催された。11月の本開催時にはニシカワリキ氏に米光一成賞が贈られたものの、藤城孝輔の受賞はなっておらず、グランプリに期待がかかっていた。グランプリの結果、藤城孝輔に藤井賞が贈られた。また、ニシカワリキ氏がグランプリを受賞し、「チームゴメラ」の威光は高まった。このグランプリ以後もチームゴメラの活動は続いている。
・佐川恭一『童Q正伝』の発売
2019年も多くの作品が公開されたが、中でも佐川恭一の『童Q正伝』は大きな反響を呼んだ。佐川恭一の作品は多くの人を惹きつけている。
3月
・牧野楠葉の小説「K子」が海外進出
破滅派では3月以降、小説が翻訳され海外に進出することが相次いでいる。これはその発端である。牧野楠葉の小説「K子」が翻訳家のカメイトシヤ氏により訳され、アメリカのオンライン文芸誌デラシネに掲載された。文学に、ましてやネットに国境のないことの、小さくも偉大な証明である。
4月
・斧田小夜が第10回創元SF短編賞優秀賞を受賞
4月23日、斧田小夜が『飲鴆止渇』で第10回創元SF短編賞優秀賞を受賞した。小説家として大きな評価を得られたと言えるだろう。斧田小夜のこれからの活躍に期待したい。また、7月27・28日に開催される「第58回日本SF大会 Sci-con」にも斧田小夜が登壇する予定である。
5月
・文フリ東京で短編集『モロゾフ入門』販売
5月6日に開催された第28回文学フリマ東京で、『モロゾフ入門』が販売された。奇妙なウクライナ人作家エメーリャエンコ・モロゾフの「翻訳」を各自が持ちより作られた、世界に類を見ない短編集となっている。また、破滅派として初の挑戦となる文庫版サイズの出版でもある。『モロゾフ入門』は大きな反響を呼び、すぐに完売となった。しかし、この後にも続きがある。
・佐川恭一『スカーレット・ヤングスター』発売
佐川恭一の初期短編集『スカーレット・ヤングスター』が、惑星と口笛ブックスより5月20日に発売された。佐川恭一のファンとして見逃せない短編集である。
・髙井ホアン(Juan.B)の単著『戦前不敬発言大全』『戦前反戦発言大全』発売
髙井ホアン(Juan.B)『戦前不敬発言大全』『戦前反戦発言大全』が5月25日にパブリブより発売された。「戦前の不敬・反戦発言Bot」を運営し8000フォロワーに日々抵抗者の姿を伝えてきたJuan.Bの初の単著であり、4年の執筆期間をかけた約1200ページの大著でもある。戦前の庶民の広く知られていない言動が、この2巻によって明らかになる。是非とも手に取ってその歴史的重みを感じてほしい2冊である。各地の書店やネット通販で好評発売中。
6月
・『モロゾフ入門』が毎日新聞で紹介、そして電子化
実在しない作家・モロゾフの「加速する翻訳熱」 皮肉と過激、ネットで戯れ
6月2日、毎日新聞ネット版でエメーリャエンコ・モロゾフと、『モロゾフ入門』が紹介された。続いて同日、要望が多かった『モロゾフ入門』電子書籍版が発売された。セックスから皇室まで、際どいテーマが多い『モロゾフ入門』が毎日新聞に取り上げられたのは驚きでもあるが、モロゾフの魔力はあらゆる転換を可能にするのかも知れない。
・牧野楠葉「あなたの臍の汚さが好き」、高橋文樹「とどめの一滴」と、続く海外進出
牧野楠葉の小説「あなたの臍の汚さが好き」が米オンライン文学誌「Ghost City Review」6月号に、高橋文樹の小説「とどめの一滴」がオンライン文芸誌Bewildering Storiesに掲載された。破滅派の海外進出は止まらない。
・高橋文樹「pとqには気をつけて」が『短編ベストコレクション ~現代の小説2019 ~』に収録、短編集『いい曲だけど名前は知らない』も発売
https://hametuha.com/series/good-song-but-anonymous/
高橋文樹の小説「pとqには気をつけて」を収録した、日本文藝家協会アンソロジー『短編ベストコレクション ~現代の小説2019 ~』が徳間文庫より6月11日に発売された。短編の魅力を味わえる一冊となっている。また、短編集『いい曲だけど名前は知らない』も電子書籍で発売されている。2013年から2019年までの、様々な短編が収録された、高橋文樹の自薦短編集となっている。
・岡山県文学選奨の審査員に藤城孝輔が就任
6月23日、藤城孝輔が第54回岡山県文学選奨の審査員に加わったことを自身で明らかにした。小説B部門の担当であるという。「会派・流派にとらわれず公正に審査を行うようにという方針に従い、まじめに審査に取り組む所存である」という。
・モロゾフが第7回ハヤカワSFコンテスト一次選考を通過
第7回ハヤカワSFコンテスト一次選考結果が25日発表され、『エメーリャエンコ・モロゾフ』がカナエユウイチ名義で一次選考を通過していたことが明らかになった。詳細は未だ明らかでない部分が多いが、モロゾフの作品環境の一端を担う破滅派としても大いに注目しておきたい。モロゾフとSFの出会いは何を引き起こすのだろうか?
以上、2019年前半における破滅派の活躍の軌跡を紹介した。7月以降も、破滅派と同人の活躍に期待である。そしてまた、破滅派はいつでも同人の参加を待っている。偶然の出会い、知人による紹介、(Juan.Bの様に)規制と放浪の末の漂着など、様々な人々が様々な形で参加でき、そして積極的な意義を担えるのが破滅派である。後ろ向きのまま前に進め!
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