南洋群島の楽園パラオは、宗おじさんの思っていたほど栄えてはいなかった。つきまとう植民地の悲しい幻影。蝕まれていく現地の人々の悲しさを充分に理解しながら、宗おじさんは南洋を活路とすることを決意する…
ついに南洋航路へと船を出した宗おじさん。大正時代の航海は辛く危険に満ちたものだったが、ついに南洋群島の一つであるパラオへと辿り着く。パラオは南海の極楽さながら、珍かなものに満ちた楽園だった。確信…
「性格の悪い語り手」Fの大伯父・宗おじさんは、五曜会の面々に働きかけ、なんとか南洋就航を成し遂げようとする。それは早すぎた時代の一代ベンチャー事業だった。
取材を終えたFはミツムネ氏の父(つまりFの大伯父)である「宗おじさん」について書き始める。それは大正時代を舞台にした、壮大な海洋冒険物語だった。
「性格の悪い語り手」Fは、ついにミツムネ氏に再会する。まったくもって文学をまっとうするつもりのない弟子DDをひきつれて、Fの取材は佳境を迎える。
祖母からアルバムをせしめたFは、家族史のタブーを暴くべく、弟子のDDをひきつれてはるか山口の柳井市まで向かう。Fの祖先のルーツがある柳井は、決して彼を暖かくは迎え入れないのだった。
病床にある祖母をしつこく訪ね続けた性格の悪い語り手Fは、ついに家族史のタブーへと触れる。祖母を苛むFを見かねた従姉のWちゃんは、彼をねちっこく非難するが、不貞の孫Fはそんなことなどいっこうに意に…
性格の悪い語り手Fは、ミツムネ氏に関する情報を得ようと、祖母の元を訪れる。おぞましくも可愛らしい祖母は、ミツムネ氏について尋ねるFに対して、なぜか激昂するのだった。
なぜFは血のことを書くに至ったのか? その秘密は、彼が訪れた祖父の葬式にあった。そこに現れた胡散臭い親父ミツムネ氏は、Fを「坊ちゃん」と呼び、慇懃な握手を求める……
20世紀の墳掘り人たることを目指す「性格の悪い語り手」Fは、最高の小説として「血のこと」について書くことを思いつく。彼は自分の経歴を調査し、ついに親族の宗おじさんのことについて書くことを思い当た…
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