消雲堂の投稿一覧 101件

  1. 無職の湯河原温泉行 弐 無職紀行 / 小説

    • 消雲堂
    • 11年前
    • 1,512文字

    僕とナマコを乗せたバスは15分ほどで現地に到着した。「源泉境バス停」は小さな橋を渡ってすぐだった。バスから降りて橋の上から渓流を見ると、川面にくっつくように垂れ下がったモミジや楓の葉は見事に紅葉…

  2. 無職の湯河原温泉行 壱 無職紀行 / 小説

    • 消雲堂
    • 11年前
    • 1,980文字

    乳がんで左乳房を失ったナマコを温泉に連れて行きたいと思った。   手術前にはふたりで温泉旅行をすることも多かったのだが、4年前に手術をした後、ナマコを温泉旅行に誘っても「温泉に行っても…

  3. 「分身」 夢奇譚 / 小説

    • 消雲堂
    • 11年前
    • 911文字

    朝、洗濯機が動いて「ウン~ウ~ンウン・・・」と機械的な唸り声をあげている。 僕は、鏡を見ながら歯を磨いている。 鏡の中で歯を磨く自分の姿がブレて二重に見える。子供の頃から乱視なので「いつものこと…

  4. 「赤い華族」 歴史奇譚 / 小説

    • 消雲堂
    • 11年前
    • 1,130文字

    ロシアのロマノフ王朝を退けたロシア革命の余波は、日本にも大きく影響しました。昭和の初期には恐慌、失業増加の不穏な世相の中に共産国家を理想郷として夢を追った若者の中には、本来ならば共産主義に対抗し…

  5. 「穴」 夢奇譚 / 小説

    • 消雲堂
    • 11年前
    • 685文字

    「穴」 朝、歯を磨いていると、鼻の穴がムズムズする。「鼻毛が伸びたか?」と思って鏡に顔を近づけて鼻腔を広げて覗き込む。 鼻毛が長く伸びている様子はないが、鼻の奥から何かが僕を覗いているような気が…

  6. 生死生命論 小説

    • 消雲堂
    • 12年前
    • 1,652文字

    僕たちは、日々、会社や学校まで電車やバスに乗って通います.これが生死運命の全体像です.始発駅が誕生で到着駅が死です.簡単に書いてしまいますが、まあ我慢してください.人によって通勤通学時間は変わり…

  7. 安全に与した男たち その1「伊能忠敬」 小説

    • 消雲堂
    • 12年前
    • 1,393文字

      江戸時代の旅人は1日に10里(40キロ)は歩いたと言われる。実質7時間程度で測量しながら10里を歩いた。時速では5.5キロ程度だが、実際には早足で歩く以上の早さだ。さらに忠敬は幕府…

  8. 安全に与した男たち その1「伊能忠敬」 小説

    • 消雲堂
    • 12年前
    • 4,774文字

    織田信長は「人間50年、下天のうちをくらぶれば夢幻の如くなり、ひとたび生を得て滅せぬもののあるべきか」と言った。つまり現世の人間の平均人生に値する50年は、天人には一日でしかない。まるで夢幻のよ…

  9. 「電車で骨を喰らう女」 夢奇譚 / 小説

    • 消雲堂
    • 12年前
    • 2,321文字

    その日、僕は仕事で荻窪に出かけた。仕事が済んだのは午後9時。僕は荻窪駅から総武線の電車に飛び乗った。 電車は津田沼行きだった。以前から疑問に思っていたことだが、中央線と総武線の違いは八王子方面行…

  10. 「神の川」 夢奇譚 / 小説

    • 消雲堂
    • 12年前
    • 3,496文字

    1.   一面に広がる麦の穂がそよ風に揺れている。それは緑色の海が波打っているようにも見える。耳を澄ますと遥か遠くの入道雲の奥から微かに雷の音が聞こえる。もう・・・夏も終わりである。僕…

  11. 下妻模型屋夫人 小説

    • 消雲堂
    • 12年前
    • 3,774文字

    2010年の春・・・僕は茨城県の下妻まで出かけた。なんつったって桜満開の花見の季節であった。   下妻には街の中心部に砂沼っていう湖くらい大きな沼がある。 この沼は何も特徴がなくて殺風…