KADOKAWAが主催する『第13回山田風太郎賞』の選考会が10月21日に行われ、小川哲『地図と拳』(集英社)が受賞作に決定した。
「山田風太郎賞」は戦後日本を代表する大衆小説家、故山田風太郎氏の独創的な作品群と、大衆性、ノンジャンル性、反骨精神など氏が貫いた作家的姿勢への敬意を礎に、有望な作家の作品を発掘顕彰するために創設された。毎年9月1日から翌年8月31日までに刊行された長編および短編の文芸作品(ジャンル問わない)の中より最も面白いと思われる作品に贈られる。新人、新進、中堅作家の作品が対象。
小川哲は、1986年千葉県生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程中退。2015年に『ユートロニカのこちら側』が第3回ハヤカワSFコンテスト〈大賞〉を受賞しデビュー。18年に『ゲームの王国』(早川書房)が第38回日本SF大賞受賞、第39回吉川英治文学新人賞候補、第31回山本周五郎賞受賞。19年に『嘘と正典』(早川書房)が第162回直木三十五賞候補。ほかの著作に『君のクイズ』(朝日新聞出版)など。
受賞作となった『地図と拳』は、日露戦争前夜から第2次大戦までの半世紀、満洲の名もない都市で繰り広げられる知略と殺戮を描く歴史×空想小説。
第13回山田風太郎賞の選考会及び記者会見は、新型コロナウイルス感染症の情勢を考慮し、会見場への参加、テレビ会議システム「Zoom」での参加、双方に対応した形式にて実施した。
代表して選評を述べた朝井まかては「満場一致で決まりました。選考委員が刺激を受けた・面白いと感じた所がそれぞれ異なっていたのも特徴的でした」「壮大なる歴史小説、戦争文学として、非常に高度な成果を得た作品。日露戦争前夜から第二次世界大戦までの複雑な時代を舞台に、戦争の力学と人間を描き出していました」と選考を振り返った。
この日の記者会見で小川は「非常に光栄です。<山田風太郎>の名前を冠した賞をいただくという事は、小説を書く者として襟を正さねばという思いになります」「読んでくださる方になるべく密度濃く、なるべく楽しんでもらえるように、頭をフルに使って汗をかいて書いていきたい」と今後の執筆活動への意欲を述べた。
小川には、正賞として記念品(名入り万年筆)と副賞100万円が贈られる。本賞の贈賞式および祝賀会は、新型コロナウイルス感染拡大の状況を考慮し、11月25日に都内で関係者のみで規模を縮小しておこなう予定。
なお、選考委員の朝井まかて、恩田陸、貴志祐介、筒井康隆、夢枕獏による選評は『小説 野性時代 特別編集22年冬号』に掲載予定。
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