ノーベル平和賞を受賞した、「ノーヴァヤ・ガゼータ」紙編集長ドミトリー・ムラトフが、列車内で襲撃されペンキをかけられる被害にあった。

「ノーヴァヤ・ガゼータ」(Новая газета)紙はロシアで1993年に創刊し、長年に渡りロシアのプーチンによる権威主義体制を批判してきた。その姿勢から度々脅迫を受け、同社所属のジャーナリストが複数人不審死を遂げている。編集長のドミトリー・ムラトフは言論の自由を守る姿勢と独裁権力への対抗が世界的に評価され、2021年に、フィリピンのジャーナリストであるマリア・レッサとともにノーベル平和賞を受賞している。

2022年2月24日のロシアによるウクライナへの侵攻以降、ロシア国内での言論の自由は制限され、侵攻に反対する記事を複数掲載した「ノーヴァヤ・ガゼータ」も政府からの廃刊の圧力により、3月28日以降発行を見合わせている。ドミトリー・ムラトフはノーベル平和賞メダルを、ウクライナ支援の為にオークションで売却する意向を示していた。また、4月7日からは亡命記者により「ノーヴァヤ・ガゼータ・ヨーロッパ」が立ち上げられ、ロシア国外からの報道を行っている。

4月7日、ドミトリー・ムラトフはモスクワからサマーラに向かう列車内で二人組の男に襲撃され、赤い塗料をかけられる被害にあった。襲撃犯は「ムラトフ、我々の少年のために」(Муратов, вот тебе за наших пацанов)と叫びペンキをムラトフにかけた後、逃走している。ムラトフは目を負傷したものの命に別状はなく、襲撃後ペンキにまみれた姿を「ノーヴァヤ・ガゼータ・ヨーロッパ」のインスタグラムで公開している。