「牡蠣」の字だけを練習する異色の漢字ドリル『広島 牡蠣とり帳』が登場した。製作したのは広島県で、12月19日以降に県内の小学校や公立図書館へ配布されるという。一部の小学校では同ドリルを冬休みの宿題とし、年明けに「牡蠣初め式」を実施する予定もあるそうだ。

牡蠣の生産量全国1位である広島県では、今年10月より「カンパイ!広島県 牡蠣ングダム」と称した観光プロモーションを展開している。ところが先ごろ県が実施した調査では、「牡蠣」の漢字を正しく書ける県民は500人中3人しかいないという衝撃の結果が出た。そこで県の特産品への愛着と理解を深めてもらうべく企画されたのが、今回の『牡蠣とり帳』だった。

『牡蠣とり帳』では、ただ「牡蠣」の文字や書き順を覚えるだけではなく、例文にも趣向が凝らされているのが特徴だ。収録された97の例文はすべて牡蠣にまつわるもので、牡蠣の豆知識や広島における牡蠣養殖の歴史なども学ぶことができるという。

この企画が持ち上がった背景には、おそらく今年大ヒットした『うんこ漢字ドリル』があるのだろう。『うんこ~』は人気の一方でお堅い層からの批判もあったが、『牡蠣とり帳』の場合は地域学習や食育の側面も兼ねているので、文句はまず出ないのではないか。

学校によっては、「まだ習っていない漢字を使ってはいけない」という子供の知的好奇心をむざむざ削ぐような悪しき慣例が残っているところも多い。そんななか、県ぐるみで常用漢字外の文字を覚えさせるという試みは、なかなか先進的といえる。幼少期から難読漢字を覚えるのが好きだったにもかかわらず作文で使うのを禁じられていた筆者としては、実に羨ましいかぎりである。

残念ながら『牡蠣とり帳』は非売品だが、広島県庁でも閲覧できるようなので、訪れる予定のある読者はぜひチェックされたい。