チリの国民的詩人パブロ・ネルーダを題材にした映画『ネルーダ 大いなる愛の逃亡者』(英題: Neruda)が、2017年11月11日より日本公開された。同作はチリ、アルゼンチン、フランス、スペインの4か国による合作映画で、国民から英雄視されながらもチリ政権から敵視されていたネルーダの国外逃亡生活が描かれている。
パブロ・ネルーダは、1904年に生まれた詩人だ。ガルシア=マルケスをして「あらゆる言語を通じて20世紀最高の詩人」と言わしめたほどの奇才で、1971年にはラテンアメリカ文学者として3人目になるノーベル文学賞も受賞している。その一方で、チリ国内では政治家としての顔をもっていたことでも有名だ。
ネルーダは30代前半、外交官時代にスペイン内戦を目の当たりにしたことで共産主義に傾倒したといわれる。1945年に上院議員に初当選すると、それと同時にチリ共産党に入党した。しかしわずか3年後、政権が親米政策の一環で共産党を非合法化したため、ネルーダは国を追われてしまう。ネルーダは大学在学中から詩人として評価されており、その発言の影響力が強かったことも政府から敵視された一因だと考えられている。
今回の映画『ネルーダ』は、そんな1948年の逃亡生活が舞台の物語だ。代表作である詩集『大いなる歌』はこの時期に書かれたとされるが、それ以外は謎に包まれており、スタッフの想像力が大いに刺激されただろうことは容易に想像できる。映画では追跡者との関係を軸にしたスリリングなサスペンスフィクションとなっているので、とくにラテン文学への造詣がなくてもエンタテインメントとして楽しむことができるはずだ。これを機にネルーダの作品に触れてみるのもよいだろう。
現時点で上映が予定されている劇場は、全国で20スクリーンとなる。大都市圏以外ではなかなか劇場に足を運ぶのは大変かもしれないが、ラテンアメリカ文学に興味があるのであればぜひ足を伸ばしてみよう。
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