写真を撮ったこともないのに、カメラのことだけは知っている――そんな曽祖父がついに(以降は週一くらいで更新します)
序章 早春の濁りが喉の奥でざらついた音をたて、僕は焦って息を吐いた。 ドルル、ドルルと背後から不吉な音がする。不吉な音の正体はエンジンだ。軽トラックにのった父が僕を追いかけている…
村は重苦しい空気に包まれている。どの家も軒先に喪に服していることを示す鈍色の布を吊るし、人々も鈍色の服を身に着けているのはが死者を弔っているからだ。 ガプガワンが、死んだ。 その死は定められたも…
森林限界の辺縁にすまう人々にとって春とともに山を登り、冬とともに山を降りる交易びとは特別だ。かれも例外ではなかった。