とらのあなはいわゆる「薄い本」(二次創作のエロ漫画)の豊富な品ぞろえを誇り、コミケなどで活躍する大手サークルの作品も並んでいる。これまでも通販サイトは存在していたが、「とらのあな電子書籍」では、ストリーミング型の電子書籍配信も行う。大手サークルをはじめとして5,000冊のラインナップから開始し、紙の本と同時購入すると割引になる「セット販売」機能なども備えている。
気になるのは二次創作のラインナップだ。トップページを確認すると、男性向けでは『グランブルー・ファンタジー』『アイマス』『ラブライブ!』『艦隊これくしょん』、女性向けでは『黒子のバスケ』『刀剣乱舞』『おそ松さん』『TIGER & BUNNY』などの「版権物」が並んでいる。KADOKAWAは二次創作に寛容だが、あくまでカクヨムのようなサービス上でのみ公式に二次創作を認めているにとどまる。
とらのあなやメロンブックスをはじめとする「薄い本専門書店」はそのビジネスモデルがグレーゾーンに存在する。コミケでは「頒布」という「あたかも配布しているだけ」とでも言いたげな言葉が使われているが、二次創作という権利侵害がお目こぼしを受けられるのは、「数日のイベントで来てくれた人に渡すだけだから」という建前があったからだ。しかし、「壁サー」と呼ばれる大手サークルが数千万円の売上を計上し、ネット通販で全国津々浦々にまで届けられるようになった現在、その建前も崩れるている。まして、電子書籍となればなおさらだ。
もちろん、出版社側としても二次創作文化が巨大な市場であることは理解しつつあり、その利益を自社に組み込もうとする姿勢もかいま見えるが、「とらのあな電子書籍」がかなり攻めたサービスであることは間違いない。おそらくではあるが、電子書籍としてあまりメリットがないストリーミング方式を採用したのは、ユーザーの利便性に配慮したというより、著作権上の問題が発生したときに配信を停止できるからではないだろうか。今後、サービスの展開がどのような帰結を迎えるかを含め、注視していきたい。
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