今月は新潮、文學界、群像、すばるの4誌が発売された。4誌の概観をここで紹介しよう。
新潮 2025年6月号
・【創作】では、松浦寿輝「虹の架け橋」、竹中優子「水辺のフリスビー」、筒井康隆の掌編「路面電車」、高山羽根子による連作「ヴァルプルギス」、千葉雅也の連載小説「マイネームイズフューチャー」(第3回)が掲載。
・「第49回川端康成文学賞」受賞作は、奥泉光「清心館小伝」。選考委員の荒川洋治、角田光代、辻原登、堀江敏幸、村田喜代子による選評も併せて。
・【回相談】では、聞き手高橋睦郎・中村哲郎による「坂東玉三郎、三島由紀夫を語る」。「椿説弓張月」も演じた当代きっての歌舞伎役者が明かす、作家の影響とは。
文學界 2025年6月号
・野口あや子の詩歌「共犯の花」が掲載。
・【創作】では、日比野コレコ「たえまない光の足し算」、永方佑樹「生成変容体」、グレゴリー・ケズナジャット「トラジェクトリー」。
・【特集】「金原ひとみとヤブノナカ」として、『YABUNONAKA-ヤブノナカ-』を上梓した金原ひとみにスポットライトを当てる。金原ひとみ×山崎怜奈による対談「ぬるい地獄を生き抜くために」、「金原ひとみのお悩み相談」として、穂村弘、阿部和重、高瀬隼子、伊藤亜和、樋口六華、尾崎世界観が相談者になり、金原が彼らの相談に応じる。郷原佳以による書評「自己告発のスパイラル――金原ひとみ『YABUNONAKA-ヤブノナカ-』」。
・平民金子による連載「めしとまち」が完結。
・「2025年上半期同人雑誌優秀作」は、岡本千尋「誰そ彼のあわいに」。
群像 2025年6月号
・【特集・乗代雄介の10年】として、今年デビューから10周年を迎える乗代雄介を特集。創作「ボートハウス」、新連載「絵画という地図を手にして」が掲載。さらに、インタビュー「二つのライフワークと「書くこと」について」(聞き手・構成=江南亜美子)、あわいゆきによる解題「全単行本解題」。
・「第68回群像新人文学賞」当選作は、綾木朱美「アザミ」と駒田隼也「鳥の夢の場合」の二作。作者による受賞の言葉と、選考委員の朝吹真理子、島田雅彦、藤野可織、古川日出男、町田康による選評も併せて。
・小西康陽「これからの人生。」と山中瑶子「庭を耕す」による新連載がそれぞれスタート。
・小川哲「小説を探しにいく」が最終回を迎える。
すばる 2025年6月号
・【特集:ハン・ガン 死と再生の文学】として、昨年ノーベル賞を受賞したハン・ガンに注目。斎藤真理子「「ごはん」から見えてくるハン・ガンの文学世界」、川村湊「漢江に注ぐ水流――ハン・ガンと「四・三事件」」、金ヨンロン「私はそれを見たいだろうか――ハン・ガン『別れを告げない』を読む」。
・「第十回渡辺淳一文学賞」受賞作は、木下昌輝『愚道一休』。
・「第四十回詩歌文学館賞」詩部門は、中尾太一『フロム・ティンバーランド』、短歌部門は中根誠『鳥の声』、俳句部門は中村和弘『荊棘』がそれぞれ受賞。
・山内マリコ×吉田恵里香による対談「シスターフッドのその先へ」が掲載。
以上、2025年5月発売の4誌について、概観を紹介した。読書の一助になれば幸いである。
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