熱湯を注入した風船……。消火器とマグナムを自称する柴犬……。弾倉の色……。炒められた卵の残り香……。「待ってくれ……。おれはもう二十七時間も尿を出していないんだ……」
『脳』と脳が収束して吸い込まれていく感触……。「おれは暗闇の中で足から溶けていき、やがて水泳のような滑らかで色の無い空間に佇む……」
田中山羊は巨大企業の取締役社長秘書らしい擦れた声で答えながら佐藤山羊の机に近づいた。
おれたちの錠剤を取り戻せ。「精神科医は宿ではないんですよ?」
すると例のアイス・クリイム屋の男が変形した虹色の頭の右手の口を開いて話しかけてくる。
「ハッピー・クリスマスだろ? そもそも今日は三が日ですよ?」
「は、はい……。僕は尻で感じるのですぅ……」四つの手を持つ少年は軍用の迷彩柄長ズボンのポケットからチョコレート・バーを取り出しておれに向ける。「これを入れてくれませんか?」少年はズボンを脱いで尻…
そしておれは山羊に変身する……。襲い掛かってくる毛の群れから山羊の形を探し出し、素手の中で彼らの舌を感じる……。
おれは必死に、『砂で作られた壁』、を見上げる。そして空中で分解された蟻の巣を思い出す。脳裡にはギターの香りを吹いたばかりのカプセルが散乱している。昆虫らしい顔色と音……。香りのような雰囲気……。…
どうしようもない無職の、とても汚い山羊たち。
どうか、『ナイス』とだけ言ってくれないか……。
それは五度目の夏休みに起こった出来事だ……。
彼はどこの病院にも所属しない。しかし彼は、どの病院にも身分を置いている……。
お前たちは一体、何で小説を書いているんだ?
通過していく弾丸の硬い全身と熱を込めた深緑色の人の形……。
街の中で蠢いている多様性の硬い透明で不確かな角ばった山羊たち。
おれは新しい総括係に書類を提出して夕食を小銭で済ませようとしていたところだ……。
最奥地の棚の中で埃と共に暮らしていたステンレス・ノート……。