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殯の器 ゐで保名(著)

肌は剥がれ、骨は真珠と化し、血の道を銀が走る。匠らは、己が身を材とした。愛しき者の身をも。

  1. 連載中 (最終更新: 2026 年 10 月 18 日 )
  2. 10 作品収録
  3. 39,238文字(400字詰原稿用紙99枚)

Authors & Editors 執筆者一覧

ゐで保名

ゐで保名 著者

『香屍』第2回創元ホラー長編賞1次選考通過中

Works 収録作一覧

  1. ゐで保名

    1. 『青哭』序章「海底の泥」

    • 小説
    • 2,824文字
    • 2026 年 10 月 8 日公開 更新

     康暦の世の、秋のことなり。  周防の国より長門の奥処へと、ただ独り草鞋の緒を締め直して巡礼の歩みを運ばせし僧・浄雲は、赤間関の荒れ果てたる浦にて、奇異なる裂を見たり。  その日は朝より陰欝なる雲垂れ込め、玄界灘より吹き […]

  2. ゐで保名

    2. 『青哭』第一章「色なき娘」

    • 小説
    • 5,050文字
    • 2026 年 10 月 9 日公開 更新

     色は、痛みに似たり。  青玄の眼には、物心つきたる頃より、この世の凡百の事象が、過ちの如き鮮やかさをもつて映じてゐた。常人の眼が形を捉へ、光を分かつに留まるべきところを、青玄の瞳は、万象の底に潜む感情の滓、肉体の腐れゆ […]

  3. ゐで保名

    3. 『青哭』第二章「灰汁と塩」

    • 小説
    • 4,589文字
    • 2026 年 10 月 10 日公開 更新

     千鶴が小屋に棲みつきしより、染物小屋の空気には、奇異なる凪が訪れた。  朝、引き潮の瀬戸より吹き込む風は、岩肌を削るやうに冷たく湿つてゐたが、千鶴はその風の中を物音も立てずに歩み、浜に打ち上げられたる流木を拾ひ集めては […]

  4. ゐで保名

    4. 『青哭』第三章「哭甕」

    • 小説
    • 4,733文字
    • 2026 年 10 月 12 日公開 更新

     染色の刻は、夜半に訪れた。  海鳴りは風の息のやうに低く唸り、満ち潮の飛沫が小屋の羽目板を濡らす中、青玄は生成りの麻布を三尺ばかり切り揃へ、水槽に浸して固く絞つた。糊気を抜き、繊維の奥まで潮気を湿らせたる布は、青玄の指 […]

  5. ゐで保名

    5. 『青哭』第四章「風晒しの刻」

    • 小説
    • 4,231文字
    • 2026 年 10 月 13 日公開 更新

     夏至を過ぎたる頃より、青玄の肉体は、決定的なる崩壊と変容の坂を転がり落ち始めた。  朝、井戸端に立ちて手桶の水を掬ひ、己の顔を映したる青玄は、そこに立ち現れたる異形を凝視して立ち竦んだ。  両の眼球——かつて澄みたる黒 […]

  6. ゐで保名

    6. 『青哭』第五章「藍眼」

    • 小説
    • 3,553文字
    • 2026 年 10 月 14 日公開 更新

     突風は、染物小屋の羽目板を紙風船のやうに震はせ、関の瀬戸の荒れ狂ふ潮飛沫を、容赦なく土間へと吹き散らした。  吹き飛んだ蔀戸の開口部より、夜の海が黒々と口を開けて覗いてゐる。壇ノ浦の早瀬は白き牙を剥き、渦巻く波頭が岩礁 […]

  7. ゐで保名

    7. 『青哭』第六章「青き血潮」

    • 小説
    • 2,779文字
    • 2026 年 10 月 15 日公開 更新

     沈む刻は、静寂そのものであつた。  千鶴の細き両腕に抱き抱へられ、無垢の白麻の反物を幾重にも身に纏ひたる青玄は、三番目の大甕の縁に、ゆつくりとその身を預けた。  胸の裂け目より溢れ出づる黄金色の液は、白麻の繊維を芯まで […]

  8. ゐで保名

    8. 『青哭』終章「天涯の青」

    • 小説
    • 2,105文字
    • 2026 年 10 月 16 日公開 New!

     土蔵の隙間より、白み始めたる朝の光が、埃の舞ふ闇を細長く射し貫いてゐた。  行燈の油はとくに尽き果て、芯の先が白煙を上げて燻る中、浄雲は膝の上に広げたる草紙の、最後の頁をそつと閉じた。  指先が、強張つて動かなかつた。 […]

  9. ゐで保名

    9. 『銀板鏡』序章「硝酸の檻」

    • 小説
    • 5,158文字
    • 2026 年 10 月 17 日公開 New!

     死者を立たせるには、関節の音を聴かねばならぬ。  明治十年二月、雪解け泥の跳ね返る浅草観音堂の裏手、水茶屋の軒が密集する淫靡なる路地の奥処に、外光を遮断した土蔵破りの写真場があつた。  暗室を兼ねたるその六畳敷きの間に […]

  10. ゐで保名

    10. 『銀板鏡』第一章「銀血の標本」

    • 小説
    • 4,216文字
    • 2026 年 10 月 18 日公開 New!

     浅草の暗室から引き摺り出された時景の手首には、冷酷なる鉄の手錠が噛まされてゐた。  抜刀隊の警部補らは、時景が日光を嫌ふ体質であることを知るや、黒き厚布の頭巾を頭から乱暴に被せ、泥濘に濡れたる荷馬車の荷台へと投げ込んだ […]

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