（画像は2016年に幻冬舎より刊行された津原泰水『ヒッキーヒッキーシェイク』。装画はビートルズとの関りで有名なドイツ人デザイナーのクラウス・フォアマン、装丁は松木美紀によるもの　19時35分追記）

幻冬舎より今年4月に出版予定だった津原泰水の小説『ヒッキーヒッキーシェイク』文庫版が、幻冬舎および同社代表取締役社長の見城徹とのトラブルで出版中止となっていたことが分かった。

小説家の津原泰水氏が5月13日に自身のツイッターで語ったところによると、幻冬舎文庫より今年4月に出版予定であった小説『ヒッキーヒッキーシェイク』について、1月に突如幻冬舎より出版停止を告げられたという。発端は、同じく幻冬舎より出版されていた百田尚樹による日本史書『日本国紀』の内容について、Wikipediaなどのネット情報の無断引用と見られる部分が多いことを、津原氏がたびたびツイッターなどで指摘していたことに始まる。津原氏の指摘行為に対し、幻冬舎は2016年に刊行された『ヒッキーヒッキーシェイク』の文庫化他出版に協力できない旨を一方的に伝え、ゲラやカバーなど含め９割完成していた『ヒッキーヒッキーシェイク』の出版が取りやめられたという。なお、その後、『ヒッキーヒッキーシェイク』は早川書房のハヤカワ文庫JAから6月6日に刊行されることとなった。

一方、幻冬舎代表取締役社長の見城徹氏も5月16日にツイッター上で経緯について反論しており、津原氏の『日本国紀』に対する言及を誹謗中傷とした上で、津原氏からの申し出により双方の了承の上で出版を取りやめたことを語った。また、幻冬舎における津原氏の著書の実売部数についても批判的にツイートしていたが、多くの批判を受けて17日正午ごろに該当ツイートを削除した。

ツイッター上ではこの件に関して多くの反応が寄せられている。百田尚樹『日本国紀』の内容や、出版に関して政権に近い立場への批判の再燃が見られるほか、編集・出版業界関係者からは見城氏の部数についてのツイートに大きな批判が集まっていた。見城氏と過去に関与した人々による不信感を伝えるツイートや、幻冬舎関連書籍への不買を口にする人々も現れる中、一方で幻冬舎は企業として出版を取りやめる自由があると語る人々もあり、現在も多くの議論が交わされている。百田尚樹『日本国紀』の記述に関する問題も含め、幻冬舎および見城氏と、津原氏とのトラブルは依然大きな注目を集めそうだ。一方、『ヒッキーヒッキーシェイク』は織田作之助賞最終候補作となった経歴のある小説であり、こちらの出版にも注目が集まっている。