安部公房の作品が電子書籍化する。新潮社は生誕100年にあたる3月7日から新潮文庫から刊行している作品を電子書籍として配信する。

 安部公房は、1924年東京生れ。東京大学医学部卒。1951年「壁」で芥川賞を受賞。1962年に発表した『砂の女』は読売文学賞を受賞したほか、仏では最優秀外国文学賞を受賞。ほか、戯曲「友達」で谷崎潤一郎賞、『緑色のストッキング』で読売文学賞を受賞するなど、受賞多数。1973年には演劇集団「安部公房スタジオ」を結成、独自の演劇活動でも知られる。海外での評価も高く、1992年にはアメリカ芸術科学アカデミー名誉会員に。1993年急性心不全で急逝。

 予約は2月23日から各書店で受付中。電子書籍化されるのは以下の作品。

他人の顔/壁/けものたちは故郷をめざす/飢餓同盟/第四間氷期/水中都市・デンドロカカリヤ/無関係な死・時の崖/R62号の発明・鉛の卵/人間そっくり/燃えつきた地図/砂の女/箱男/密会/笑う月/友達・棒になった男/方舟さくら丸/カンガルー・ノート/飛ぶ男

 なお、遺作となった新刊『飛ぶ男』は2月28日から先行配信する。現在発売中の「新潮」、「芸術新潮」、「波」各誌の3月号では安部公房特集を掲載している。

 日本でいち早くワープロでの執筆を実践し、ワープロの開発にも携わった。原稿もフロッピーディスクで残し、日本でも冨田勲と並ぶ最初期のシンセサイザー所有者としても有名で常に革新的な人物だったようだ。安部公房の作品がデジタルで読めるというのは、きっと彼にとっても本望なのではないだろうか。