「第60回谷崎潤一郎賞」が発表され、柴崎友香『続きと始まり』(集英社)が受賞した。

 同賞は中央公論新社の創業80周年を記念して、1965年に創設された。明治・大正・昭和を通じて、幅広いジャンルで活躍した谷崎の業績にちなみ、時代を代表する優れた小説・戯曲を顕彰する。昨年は津村記久子『水車小屋のネネ』(毎日新聞出版)が受賞している。

 『続きと始まり』は2020年~2022年にかけての三年間を、異なる場所で暮らす三人の男女の視点を通して描く。コロナ禍と東日本大震災、阪神淡路大震災という未曽有の困難に遭遇した人々の暮らしの中で蓄積した時間を見つめる叙事詩的長篇小説。すでに「第74回芸術選奨文部科学大臣賞」を受賞していて、今回の受賞で二冠となった。

 柴崎友香は、1973年大阪府生まれ、東京都在住。大阪府立大学卒業。1999年「レッド、イエロー、オレンジ、オレンジ、ブルー」が文藝別冊に掲載されデビュー。2007年『その街の今は』で芸術選奨文部科学大臣新人賞、織田作之助賞大賞、咲くやこの花賞を受賞。2010年『寝ても覚めても』で野間文芸新人賞、2014年『春の庭』で芥川賞を受賞。そのほか『パノララ』『千の扉』『待ち遠しい』『百年と一日』、エッセイに『よう知らんけど日記』など。

 8月26日に選考会が行われ、選考委員の池澤夏樹、川上弘美、桐野夏生、堀江敏幸(筒井康隆は欠席)が出席した。

 贈賞式は、10月17日に都内で開催される。

 なお選評は、10月10日発売の『中央公論 11月号』に掲載される予定。