宮島未奈『成瀬は天下を取りにいく』(新潮社)が、「第39回坪田譲治文学賞」を受賞した。

 「坪田譲治文学賞」は、岡山市が運営する文学賞。児童文学に新しい分野を拓いた坪田譲治の傑出した業績を称えると共に、市民の創作活動を奨励し、市民文化の向上に資することを目的として1984年に創設された。選考委員は阿川佐和子、五木寛之、川村湊、中脇初枝、西本鶏介、森詠、森絵都の七人。

 宮島未奈は、1983年静岡県富士市生まれ。滋賀県大津市在住。京都大学文学部卒。2021年「ありがとう西武大津店」で第20回「女による女のためのR-18 文学賞」大賞、読者賞、友近賞をトリプル受賞。同作を含む『成瀬は天下を取りにいく』がデビュー作。

 『成瀬は天下を取りにいく』は、滋賀県大津市に住む中学二年生・成瀬あかりが主人公。コロナ禍真っ只中の2020年の夏休み、地元の「西武大津百貨店」が閉店すると聞き、「この夏を西武に捧げようと思う」と宣言して毎日通い始める。幼馴染の島崎を通し、成瀬を追いかける青春物語。

 昨年三月に刊行され、デビュー作にして異例の14万部突破のヒット作となった。また、「静岡書店大賞」や「中高生におすすめする司書のイチオシ本2023年版」など、数々のアワードにも恵まれた。「坪田譲治文学賞」を合わせると、10冠という偉業を達成した。

 なお、2月23日に岡山市北区にある岡山芸術創造劇場ハレノワ中劇場で贈呈式が行われる。宮島には正賞として賞状及び記念品(メダル『鳥の少年』蛭田二郎作)と、副賞100万円が贈られる。

 続編である『成瀬は信じた道をいく』が、1月24日に発売されたばかり。高校生から大学生にかけて、少し大人びた成瀬が描かれている。