東京創元社が主催する『第14回創元SF短編賞』正賞を阿部登龍あべ とりゅう「竜は黙して翔ぶ」(※受賞作は最終選考会前の改稿時に改題)が受賞した。

 選考委員に宮澤伊織を迎え、東京創元社・小浜徹也を加えて4月25日に東京創元社会議室で最終選考会が行なわれた。受賞作のあらすじは以下の通り。

ザーフィラは双子の妹とともに竜の騎手になるべく生まれたが、内戦の激化により一族は離散し、戦災孤児となる。二十五年後、動物権保護を目的とする拡張ワシントン条約事務局の査察官となったザーフィラは、生体密造行為を摘発する任務中に「竜の女王」という言葉に出会う。彼女は「女王」の正体を追って母国に向かうが……

東京創元社HP 創元SF短編賞より

 最終候補には受賞作のほか、稲田一声「鶏の祈り永久に」、河野咲子「祝炎月の花園」、木下充矢「遥かなる賭け」、斉藤千「馬が合う」、坂崎かおる「ベルを鳴らして」の六作が残っていた。

 阿部は1992年北海道生まれの獣医師。受賞の言葉を以下のように述べている。

自分で描いたドラゴンの絵を、保育園の壁に貼り付けて回る子どもでした。あれからずいぶん時は経ちましたが、いまも変わらない気持ちでここにいます。賞にたずさわったすべての方々、『文体の舵をとれ』合評会クルーはじめ友人たち、家族、とりわけいつも支えてくれる母と、尊敬すべき祖父に。わたしが壁いちめんに貼り付けた沢山の絵を、剥がさないでいてくださったみなさまに。感謝を捧げます。ありがとうございました。

東京創元社HP 創元SF短編賞より

 受賞作は8月刊行予定の『紙魚の手帖vol.12』に収録したのち、単体の電子書籍として刊行し、また朗読音源化して配信する。

 なお選評は、近日中に『Web東京創元社マガジン』に掲載される。

 ※指摘を受け、記事の一部を修正いたしました。