明治から大正にかけての文豪であり、自伝的要素もある小説「坊ちゃん」や夢幻の世界を描いた「夢十夜」など今も読み継がれる作品を書いた夏目漱石(本名・夏目金之助、1867~1916)。二十代より上の世代では「前の千円札の人」として記憶している方もいるだろう。あの千円札の意匠でもある、晩年の頃の夏目漱石が、アンドロイドで蘇る……一体どう言う事だろうか。
今回、夏目漱石アンドロイド化プロジェクトを企画したのは東京都千代田区の二松學舍大学。漱石は少年時代に、二松學舍大学の前身である漢学塾二松學舍で勉強していた縁がある。監修するのは石黒浩・大阪大教授。彼はこれまでに人間国宝の落語家である故・桂米朝さんや、タレントのマツコ・デラックスさんのアンドロイドを製作し、その度に大きな話題となった。今回、夏目漱石のアンドロイドを作るのは、もちろん単なる話題づくりや冗談と言う訳ではない。中学・高校・大学などで、朗読や講演などを行う言わば「生きた教材」として使用する目的がある。有名な夏目漱石の晩年の姿が写真やデスマスクなどの資料で再現された上、孫の夏目房之介・学習院大教授が声や文章を吹き込む。アンドロイドは着座姿勢で130センチほど。ちなみに夏目漱石は身長が159センチだったと言う。
今回の企画について、孫の夏目房之介さんは「漱石の真実の姿の再現が狙いではなく、現代人がアンドロイドを介して漱石像を作っていくのが大変面白い」と語り、また製作者の石黒教授は「ロボット工学が文学に新たな研究手法をもたらすのでは」と話している。今年の十二月の完成を目指しており、近い将来、各地の学校を巡る「平成の夏目漱石」を見る事が出来るだろう。
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