「第171回芥川龍之介賞・直木三十五賞」の候補作が6月13日、発表された。

 芥川賞には、朝比奈秋「サンショウウオの四十九日」(新潮5月号)、尾崎世界観「転の声」(文學界6月号)、坂崎かおる「海岸通り」(文學界2月号)、向坂くじら「いなくなくならなくならないで」(文藝夏季号)、松永K三蔵「バリ山行」(群像3月号)の5作品が選ばれた。

 直木賞には、青崎有吾『地雷グリコ』(KADOKAWA)、麻布競馬場『令和元年の人生ゲーム』(文藝春秋)、一穂ミチ『ツミデミック』(光文社)、岩井圭也『われは熊楠』(文藝春秋)、柚木麻子 『あいにくあんたのためじゃない』(新潮社)の5作品。

 なお、選考会は7月17日に開かれる。

 なんと言っても、注目は詩人の向坂くじらによる初小説「いなくなくならなくならないで」、松永K三蔵の受賞第一作「バリ山行」とともに初ノミネートとなる坂崎かおる「海岸通り」だろう。坂崎はすでに「ベルを鳴らして」(講談社「小説現代7月号」)で「第77回推理作家協会賞」短編部門を受賞しているが、ブンゲイファイトクラブ(BFC)やそのオルタナティブである六枚道場、ウェブメディアVG+が主催する「かぐやSFコンテスト」で頭角を現した、いわばオンライン文芸の申し子と言ってもいいほど現代的な活動遍歴の持ち主だ。気は早いが、受賞ともなれば文壇がもっと開かれる場になるのではないか。

 また、直木賞では、岩井圭也『われは熊楠』とともに、対談などで破滅派の佐川恭一との共演もあった麻布競馬場『令和元年の人生ゲーム』の初ノミネートも一つの希望かもしれない。佐川恭一が直木賞にノミネートする日も近いだろう。さらに、青木有吾『地雷グリコ』はすでに「本格ミステリ大賞」、「推理作家協会賞」、「山本周五郎賞」を受賞しており、四冠の快挙を成し遂げる可能性もある。